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グレーターデーモン

　　侍　「！！ん゛っ！
　　　　　　　、ぬ゛あっ、ぅ゛！！！

　魔人はその４メートル程の蒼い巨体を唐突に侵入させて来た。
　闇の中からの奇襲を仕掛ける素振りもなく、自らの姿をたっぷりと魅せつけるような登場で、まるで５人の反応を眺めてその光景を愉しむかのようにバトルフィールドに踏み込んで来たのである。
　コボルド群の深くまで切り込んでいた侍は、突然の招かれざる眼前の魔人に驚き、飛び退いた。飛び退いたその先は、死の匂いを嗅ぎつけバトルを傍観していたスライムのジェル体の中。侍は右脚を完全にスライムの体内に踏み込んでしまい、とたんに強力な消化液を吐きかけられる。10分もあれば骨まで溶解してしまう程の濃厚な酸をまともに浴びると、侍の膝下は瞬く間に重火傷状態に見舞われた。下等なスライムの唯一注意しなければならない攻撃である。
　唸る侍は右脚に絡むスライムを瞬時に八つ裂きにして再び跳んだ。

　　侍　「誰も気づかぬかッ!!
　魔法使「グ、グレーターデーモン！
　戦士　「分散しろっ　等間隔で距離をとれっ
　聖騎士「よっ、４階だぞ！
　僧侶　「落ち着けっ！
　　　　　　こいつはハイレベルの魔法を仕掛けてくる！　


＿＿【グレーターデーモン】(表紙絵)
　魔人。翼魔人。上位魔神。身長４Ｍ前後。下階層に出現する。大きな翼を持ち、飛行能力を有する。地上と空中での機動力はどちらも高く、中型の巨人族並の巨体から繰り出される直接攻撃は多大な打撃力とともに毒、麻痺の効果を与える。更にはティルトウェイト、デセンテスなどの最高レベルの魔術も駆使する。しかも、出現する際は単体であっても、素早く仲間を呼びつけて複数攻撃を仕掛けてくるであろう。圧倒的な体力と、一瞬で死に突き落とす程の魔力を備え持つハイブリッドな魔人の存在は、冒険者達にとっては、まさに“大いなる災難”である。＿＿


魔人は最も近い位置に立つ侍に狙いをつけると上体を少し屈ませ、低い姿勢で両脚に力を溜め、一撃を放つべくその目標に跳んだ。
侍は狙らわれたことを瞬時に察知したし、その素早さは想定の範疇内でもあったの
だが、スライムにやられた右脚の傷が下半身の反応を鈍らせた。
獲物を狙う跳躍の魔人は、侍の眼前に着地するなり暴力的に殴りつける。
反応鈍る侍は上体を素早く屈め、爪拳の一撃を間一髪のところで回避、鋭い爪は背上を霞めた。
侍は２撃目が繰り出されるより先に、屈んだ体勢のまま横方向に左足の脚力だけで弾け跳ぶ。
１撃目終わりのモーションの中に隙を見出した聖騎士は背後から飛び込み、上段で斬り込む。
振り向きもしない魔人は、背後に視界があるかのように攻撃を察知し跳躍で回避。
跳んだ方角は侍と同じ。
逃がさんとばかりに手負いの侍を魔人の跳躍が追う。
一連の攻防を先読みした戦士は、侍と魔人を結ぶ直線上に移動し待ち構え、横薙ぎの楕円を描く軌道で剣を疾らせカウンターで迎え斬った。
そのカウンターさえも反応する跳躍の魔人は、強靭な脚力で地を蹴り上げると力技で進行方向を斜め上方に転換させて５メートル以上跳ね上がり、戦士の射程範囲外、剣の軌道上から容易く外れ、跳躍の最高地点にて翼をバサリと広げてその中空に停滞した。
　新米聖騎士と熟練戦士のインスタントな連携にしては、それなりの攻撃ではあったのだが、魔人の驚くべき身のこなし、運動能力は２人の連携攻撃を苦もなくいなしてみせた。

　突如現れた魔人の機動力を前にして竦み、必要以上に退き距離を確保する若い聖騎士と魔法使。

【魔法使はヘイストを唱えた
　　‐魔法使は　　素早さ　が上がった
【僧侶　はヘイストを唱えた
　　‐僧侶　は　　素早さ　が上がった
：グレーターデーモンの攻撃
　　‐魔法使は　　攻撃を回避した
：コボルドの攻撃
　　‐魔法使は　　１のダメージを受けた
：コボルドの攻撃
　　‐魔法使は　　２のダメージを受けた
【侍　　の攻撃
　　‐コボルドは死んだ
：コボルドの攻撃　　
　　‐戦士　が　　攻撃を回避した
【戦士　の攻撃
　　‐コボルドは死んだ
【聖騎士は防御している
【僧侶　はヘイストを唱えた
　　‐聖騎士は　　素早さ　が上がった
【魔法使はヘイストを唱えた
　　‐戦士　は　　素早さ　が上がった
：グレーターデーモンの攻撃
　　‐聖騎士は　　攻撃を回避した
：コボルドの攻撃　　
　　‐聖騎士が　　１のダメージを受けた
：コボルドの攻撃　　
　　‐聖騎士が　　１のダメージを受けた
：コボルドは仲間を呼んだ
　　‐コボルドが２体あらわれた
：コボルドの攻撃
　　‐僧侶　が　　１のダメージを受けた
：グレーターデーモンの攻撃
　　‐侍　　は　　攻撃を回避した
：コボルドの攻撃　　
　　‐侍　　は　　１のダメージを受けた
：コボルドの攻撃　　
　　‐侍　　は　　１のダメージを受けた
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　巣窟でのバトルにもようやく目途がつくと思われた矢先、イレギュラーな魔人の出現によって、この数分で戦況は急変してしまった。誰もが予想だにしなかった魔人の登場に面食らい、物理的形勢ではなくその精神的な心理面に於いて、パーティとコボルド群の攻守は一気に逆転してしまったのだ。
　グレーターデーモンという致命的な足枷が５人の足首に深く食い込む。
　圧倒的な体力と魔力を兼ね備えた深階層でも最も恐れられる種族の一つとされている魔人のルール破りな登場であった。