小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

「つかさ」と「ちひろ」

INDEX|7ページ/16ページ|

次のページ前のページ
 

「そんな訳の分からない本を置くわけにはいかない」
 ということである。
 そもそも、そんな新興出版社の本を、有名書店が相手するわけもない。
 それなのに、協力出版で作者に金を出させる時、
「一定期間、有名書店に並べる」
 というのが、出版社側の役目と明記してあるので、それが果たされていないとなると、作者が、
「契約違反」
 ということで、訴訟を起こすのだ。
「一人が二人、二人が三人」
 ということで、どんどん人が増えていき、
「集団訴訟」
 という形になる。
 これは、実に悪影響である。
 というのも、
「彼ら自費出版社系の会社は、自転車操業である」
 つまりは、
「人件費や宣伝広告費などを先に払って、後で作家から金を取ることで賄う」
 ということだから、
「本を出したい」
 という人が増えてこないと、回らないということになる。
 しかし、
「訴訟を起こされた」
 というのが話題になると、さすがに、
「本を出したい」
 と思っている人がいても、
「これはヤバい」
 と思って、誰も本を出すということはしなくなるだろう。
 中には、
「原稿を送って、批評だけでももらえればいい」
 ということで、
「逆に利用してやろう」
 という人も出てくるだろう。
 しかし、これは、出版社側の自業自得というもので、実際にその後、
「会社が破綻する」
 ということになるのだが、それは、
「因果応報」
 というものである。
 それが、
「自費出版社系の会社による一連の詐欺事件」
 というものであった。
 一つの会社が始めてから、
「これはうまい商売だぞ」
 ということで、真似をして始めた連中は、結局、どこか一つが破綻すれば、芋ずる式に倒産する。
 ということで、
「業界が崩れていくときの、連鎖倒産」
 というものであろう。
 それも、
「因果応報」
 というものであるが、考えてみれば、もっと情けない。
 というのは、
「他人の真似をして儲けよう」
 などということを考えている連中は、いいところだけしか見ていないのか、ちょっと考えれば、
「そんな詐欺のようなことが、そういつまでも続くわけはない」
 ということで、一番いい方法とすれば、
「始めた時点から、引き際を考え、ある程度の儲けを得られれば、速やかに撤収する」
 という方法が一番よかったのだ。
 ただ、物事というのは、
「始めるよりも、いかに終息させるか?」
 ということが難しい。
 もちろん、
「ずっと継続させる」
 ということが一番難しいわけで、
「物理的に、永遠の継続は不可能だ」
 ということが分かっているのであれば、
「本当の引き際というものが肝心ではないか?」
 ということになるのである。
 ただ、時代がちょうどよかったといえばいいのか、
「ネットの普及」
 であったり、
「スマホなどのアプリが充実してきた」
 ことから、時代は、
「紙媒体による本」
 ということではなく、
「スマホで読める」
 という、
「電子書籍」
 というものが主流になってきた。
 それまでは、あくまでも、
「印刷して製本されたものが本だ」
 ということなので、
「本を出したい」
 という人一人一人から、
「数百万円」
 という単位で、金を取ることができたが、電子書籍ということになると、
「印刷、製本、在庫の保管」
 などという手間がいらないことで、本来であれば、本屋で、千円以上した書籍が、
「ネットによる電子書籍の配信」
 として、二、三百円という、
「古本屋で買うよりも安い値段で購入できる」
 という時代になった。
 ただ、これは、
「昔からの小説家になりたい」
「本を出したい」
 という人からすれば、実に寂しいもので、それでも、
「小説を創作する」
 ということを、最優先で考えている人は、時代に乗り遅れることはないだろう。
 そういう意味で、
「にわか作家」
 というものが、
「消えていくことに拍車をかけた」
 といってもいいだろう。

                 行方不明者捜索

 まだ20代の清水巡査は、そんな過去の事件は、
「話には聞いたことがある」
 ということであった。
 だから、リアルに感じたわけでもなく、
「過去の歴史の一ページ」
 というくらいの意識でしかなかった。
 だから、
「小説を書くのはあくまでも趣味」
 ということであり、かつての人たちが考えたように、
「金のかからない趣味」
 ということで、入り口は、皆一緒だということであった。
 確かに、パソコンのない時代であれば、
「紙と鉛筆」
 という筆記具だけがあればよかった。
 明治の文豪のように、書生のような服装で、机の上に、原稿用紙が散乱していて、その後ろに、気に入らない原稿を手で握りつぶしたものが、部屋の中で、所せましと散らばっているという風景だ。
 実際に、
「趣味」
 ということであれば、
「元手のいらない」
 というものであろう。
 筆記具や、パソコンのようなものがあれば、後は、頭があればいいということになるだろう。
 後は、
「勉強のために、いろいろ本を読む」
 ということであるが、今の時代は、本屋で買うこともないので、安上がりだし、実際に、本屋にいく必要もないということだ。
 ただ、
「本を出したい」
 と思っていた人は、本というものに、一種の魔力のようなものを感じていたことだろう。
 それが
「臭いというものからくるのか?」
 それとも、
「本屋という独特の雰囲気」
 というものから感じるのか、きっと、
「そのどちらもなのだろう」
 と考えられる。
 清水巡査は、
「自分がなりたい」
 と思っていたわけではなく、
「ミステリー小説を書く」
 ということで、警察に入ったという意識もないので、
「仕事は仕事。趣味は趣味」
 と思っていた。
「趣味と実益を兼ねた」
 ということに越したことはない。
 という人がいるが、本当にそうなのだろうか?
「仕事をする気分転換が趣味だ」
 ということであれば、
「趣味をしている時に、仕事のことを考えたくない」
 と思うのも当たり前のことで、だから、
「仕事を家に持ち帰りたくない」
 という発想が生まれてくるのだろう。
 これは、
「家族のため」
 とはよく言われるが、実際には、家族のためでも何でもなく、一番の理由というのは、
「自分のため」
 ということに相違ないといえるだろう。
 だから、
「仕事中に、趣味をことを考えない」
 ということから、
「趣味の時間でも、仕事を忘れて、打ち込むことができる」
 というものであった。
 しかし、書いているのが、ミステリーだとすれば、
「無意識に、仕事中に小説を考えていたり、逆に、小説を書いている時、仕事のことが思い浮かんだりする」
 それは、あくまでも無意識ということであり、その無意識が功を奏するということもあるのであった。
 そんな時、清水巡査が勤務している、
「K駅前交番に、一人の女性が相談を持ち掛けてきた」
 ということであった。
「人を探してほしい」
 というのだ。
 話を聞いてみると、
「友だちが行方不明だ」
 というのだ。
「警察署にまず、捜索願を出さないといけないですね」