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数学博士の失踪(後編)

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 と一蹴されるに違いない。
 それこそ、
「オオカミが来た」
 といって、叫んでも、最後には相手にされなかったという、
「オオカミ少年の話」
 というものになってしまうだけで、結果としては変わりはないだろう。
 むしろ、それを信じる人がいたとしても、結局は、
「いたずらに世間を騒がせる」
 というだけで、結果的には、
「バブルの崩壊」
 というものを早めるだけということになるだろう。
 もっとも、
「バブル崩壊」
 ということの結果が同じだとしても、騒いだことでその時期が早まったとすれば、バブル崩壊というものが、起こるべくして起こったわけではなく、世間を騒がせたことが原因といって、片付けられるかも知れない。
 そういう意味で、
「バブルの崩壊」
 というのは、大きな社会問題ということであるが、その影響は計り知れないといってもいいだろう。
 バブル経済の崩壊というものが、どのような今の世の中をつくるかということが、問題であった。
 バブルの崩壊というのは、
「当たり前の社会生活」
 というものを、根底からひっくり返すということになった。
 特に、家庭生活などが変わったことで、社会が変わってくるということもあれば、社会の変化が、家庭を変化させていくという方向もあるということで、
「双方向からの問題があるが、そこに、どんな因果関係が隠されているというのだろうか?
 ということも言われたりするのであった。
「社会問題が家庭に及ぼす」
 という問題として、まずは、社会としては、
「会社の存続」
 という問題が一番大きい。
 広げすぎた事業を、このまま続けていくと、今までのように、
「広げれば広げるほど儲かる」
 などということはない。
 むしろ、
「利益に限界がある」
 ということで、必要経費などがただかさんでいくということで、
「経費が会社を圧迫する」
 ということだ。
 実際に、売り上げというものも、どんどん減っている。それなのに、経費は以前のままということでは、それこそ、経費分だけで、利益を喰ってしまうということになる。
 そもそも、
「利益による留保というものがなかった会社」
 というのは、バブル崩壊の時点で、ひとたまりもないということになるだろう。
 そうなると、会社は簡単に倒産するということで、社員は皆路頭に迷うということであった。
 そんな時代をいかにするかということになれば、
「経費節減」
 ということしかない。
「電気代をケチるために、無駄な電気を消す」
 という努力をする会社もあるだろうが、それくらいでは、まったく損失の補填になるわけもない。
 そうなると、真剣に考えての
「経費節減」
 ということであれば、考えられるのは、
「人件費節減」
 ということである。
 実際に、
「拡大する事業を見越して、たくさんの社員を雇い入れた」
 ということで、せめて、その拡大した部分だけでも、人件費を節減するしかないということになる。
 そもそも、
「そんな損にしかならない拡大した部分は、切り取るしかない」
 ということで、
「社員の解雇」
 というのは免れないというものであった。
 実際に、会社とすれば、
「計画的な社員の削減」
 ということを考えなければいけなくなり、それを、
「リストラ」
 というのであった。
 会社としても、そのリストラというものをいかに考えるかということで、
「早期退職」
 というものを募るというやり方をするところも多かった。
「今辞めてくれたら、退職金に色をつける」
 というものだ。
 社員とすれば、時代が、
「バブル崩壊」
 ということで、自分たちもいつどうなるか分からないということは、覚悟しているに違いない。
 そんな時に、
「今辞めれば、色をつける」
 と言われて、
「だったら、今辞めよう」
 と考える人も少なくはないだろう。
 実際に、
「泥船で一緒に沈む」
 ということはできないと考えている人とすれば、その言葉は、それこそ、
「悪魔のささやき」
 といってもいいかも知れない。
 しかし、世間というのは、そんなに甘いわけではない。
「自分の会社が、このような状態になったのは、社会的な問題としての、バブルの崩壊だ」
 ということが分かっているのに、
「会社を辞めて、他のところに行く」
 ということが、果たして簡単にできるかということには、どこか楽天的に考えていたのかも知れない。
 実際に、
「会社を辞めてしまうと、どこも雇ってはくれない」
 ということであった。
 むしろ、他の会社もどこも同じで、皆、
「早期退職を募る」
 というくらいであった。
 そんな会社が、
「社員募集などしているわけもなく、それこそ、コネで何とかならないか?」
 と思ったとしても、そんなことを次代が許すわけもない。
 どんなに、資格を持っていた李、優秀な社員ということであっても、
「それなら、元々の会社が引き留める」
 ということになるだろう。
 それもなく、早期退職に対して、他の社員と同じような形式的な態度しか取らないということは、
「優秀であろうが、資格を持っていようが、リストラには関係ない」
 ということで、最優先は、経費節減に尽きるということになるのであった。
 そうなると、
「世の中には、失業者があふれる」
 ということになる。
「バブル崩壊の時代」
 ということで、大きな社会問題であるということは、家族も知っているだろうが、旦那が、どんな思いでいるかということまではわかっていないだろう。
 当然、
「早期退職をした」
 などということを、知る由もなく、旦那も家族にはいえないということで、それこそ、
「朝は普通に通勤を装い、帰りは、普通に帰宅する」
 という嘘をつかなければいけないということだ。
 昼間は、行く会社があるわけでもなく、
「ただ暇を持て余す」
 ということで、しかも、
「金も使えない」
 ということで、それこそ、
「公園などで、ただ時間を潰す」
 というだけのことであった。
 実際には、児童公園のベンチなどでは、
「サラリーマンのスーツ姿の人が溢れている」
 という光景が見られ、昼休み時間になると、カバンの中から手作り弁当を出して、そこで食べているという、みるに堪えない光景というものが見られることになるのだ。
 だが、そんなことがいつまでも続くわけはない。
 給料日になれば、
「給料が振り込まれていない」
 ということが分かるのだ。
 ただ、
「年休消化」
 というものがあれば、数か月の猶予はあるだろうが、それも、時間の問題ということにしかならないということだ。
 それが、次第に、他の生活であったり、家族に降りかかってくるということになるのであった。

                 偽りの世界

 その影響は、奥さんにまずは降りかかってくる。
 それまでの昭和の時代というと、
「働きに出るのは、父親だけ」
 というのが当たり前のという時代だった。
 実際に、
「共稼ぎ」
 ということはほとんどなく、やむを得ず母親が働いている子供は、カギを持たされるということで、
「かぎっ子」
 と呼ばれていた。
 ただ、これは、悲惨な家庭というだけではなく、