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数学博士の失踪(後編)

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「この世界において、信じられないスピリチュアルなことは起こりえる」
 と言えるのではないか?
「科学で証明できないこと」
 ということになるのだろうが、
「科学で証明できないということを、信じられないことだと断定することは、逆に科学に対しての冒涜になる」
 といっている科学者がいた。
 そう、その人は、
「すべてを受け入れて、そして、その中からいろいろ考えを選定していく」
 ということを考える人であった。
 なるほど、
「すべての考えを、一本で考える」
 というのは、どこか、人間のおこがましさというものを感じさせる。
 そもそも、
「スピリチュアル」
 という言葉が存在し、それに対していろいろな説があるのだから、それら一つ一つを信じなければいけないというわけではないが、認めるというくらいの寛容な気持ちというものがあってもいいのではないだろうか?
 この店も、そんな、
「スピリチュアルの一種」
 といってもいいだろう。
 しかし、ただの興味本位でこの店に入ろうとすれば、
「店側が拒否する」
 という態度に出るといってもいい。
 それを思えば、
「昨日、この店に赴こうとしてやってきたのに、店がなかったということは、自分たちが、店を興味本位だけで考えていたということだろうか?」
 と感じた。
 しかし、実際には、
「父親が行方不明」
 ということで、不謹慎な気持ちではなかったはずだ。
 それなのに、どうして店は現れなかったのか?
 ということである。
 それこそ、
「違和感でしかない」
 だとすれば、今日、
「店がまどかの前でだけ現れたというのはどういうことだろう?」
 と感じた。
「ひょっとすると、自分と遠藤探偵が、この店で一緒に存在しているということを否定したということなのか?」
 と、まどかは考えたが、そもそも、この店は、まだまどかを受け入れたことはないはずなのに、まどかのことをよく分かったというものだ。
 だが、この店は、父親も常連だということではないか。
 その父親のことを、この店はよく分かっていて、父親の存在をここでは認めていたということになる。
「そんな父親と店との関係って、どこまでなんだろう?」
 とまどかは考えた。
 そもそも、
「店と客の関係」
 というものが、まるで、
「人間同士の関係」
 のように感じられるというのは、どういうことなのだろう?
 しかも、
「店自体が、人間に不思議な力をもたらしたり、感情を読み取ったりできる」
 などということを、誰が信じるというのだろうか?
 しかし、昔から言われる、
「妖怪」
 などというのは、
「モノに化ける」
 という妖怪もいるというではないか。
「人間に化ける」
 という妖怪もいれば、
「モノに化ける」
 という妖怪もいる。
 そんな妖怪の中でも、
「化けることに特化した妖怪」
 というのがいて、それが店に変化しているということであれば、信じがたいが理屈としてはありえることではないだろうか?
 父親のような数学者としての頭では、到底理解できないかも知れない。
 それだけに、店側の心理が、
「父親に興味を持った」
 ということであれば、分からなくもない。
 そんな父親に対して、店を司る妖怪は、何を感じたというのだろう。
 それとも、
「最初は信じられるわけなどない」
 と思っていた父親が、娘が感じたと同じ、違和感というものを感じたとして、その奥にあるものが何なのかということを思ったとすれば、
「父親の失踪」
 というのは、やはりこの店に何らかの関係があるといってもいいだろう。
 そうなると、
「父親の失踪」
 というものが、
「本人の意思」
 というものなのか、
「本人の意思に関係のないものなのか?」
 ということである。
 もし、
「本人の意思」
 ということであっても、その叶えられ方というものが、どのような形になるかというのを、父親自身が、想像もしていないことだったのかも知れない。
 そこには、
「違和感というものが存在している」
 ということから、想像もつかないことになっているとすれば、
「父親自身が封印されたのかも知れない」
 と言えるだろう。
 そういえば、昔、妖怪のマンガを見た時、恐怖に感じたというのを思い出した。
 それは、
「森の中に、一人の少年がいて、その少年と握手をした少年の足が木の幹に変わり、自部運が動けなくなってしまった」
 というものである。
 その妖怪も、以前に同じように握手をしたことで、その場から動けなくなってしまったのだという。
 だから、主人公に対して。
「次に現れる人を騙して、握手をするしか、そこから離れることはできない」
 という、そして、
「それが何十年後か、何百年後か」
 というのだ。
 つまりは、
「ここで足が生えている以上、死ぬことはない」
 というのだった。
 死ぬこともできず、ずっとその場所にたたずんでいなければいけないということは、何とも苦痛でしかないということになる。
 それを思えば、
「この店もそのような妖怪が蔓延っているのではないか?」
 ということで、
「この店には複数の妖怪がいる」
 と感じさせられるのであった。
 妖怪というものが、どのようなものなのかというのは、正直分からない。
 しかし、
「見えないが、存在している」
 ということには、違和感がない。
 そうやって、どんどん違和感を削っていくというのが、この店の中での、
「自分の役目」
 といってもいいのではないだろうか?
 そんな違和感というものを、この店は持っている。
 そして、誰も口を利かないというのは、
「これが夢の世界と同じ感覚だ」
 ということを思わせるのであった。
 確かに、
「夢の世界」
 というのは、目が覚めてから、
「誰かがしゃべった」
 という意識がない。
 そもそも、
「記憶からどんどん消えていくというのが夢だ」
 ということなのだから、
「会話をした」
 という記憶も、
「その人の声を聴いた」
 という記憶も、
「どんな声だったのか?」
 という記憶もなくなってしまったといってもいいのかも知れない。
 だから、ここでは、
「本当は会話をしたのかも知れないが、その声を思い出せない」
 ということで、まるで会話をしていないという錯覚を覚えさせられたのかも知れないということである。
 実際に、そのことを考えていると、
「夢の世界」
 というものも、
「違和感に包まれているものだ」
 ということで、この店を、
「夢の続きのように思える」
 と感じたとしても無理もないことだ。
 しかし、遠藤探偵を、
「そんな違和感も感じることなく、夢というものをそもそも信じていない」
 というような人であれば、店も、容易に打ち解けようとはしないだろう。
 しかし、
「まどかには興味がある」
 ということで、二人での来店というものを拒んだことで、苦肉の策ということで、
「店自身を消滅させる」
 という暴挙に出たのかも知れない。
 お得意様である、遠藤探偵には申し訳ないと思っているかも知れないが、それだけ、遠藤探偵が堅物だということなのかも知れない。
 しかし、
「では、父親は堅物ではないのか?」