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数学博士の失踪(前編)

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 とも思ったが、とりあえず、今日のところは、何もできないと伝えて、母親には、精神安定剤を与えたのだ。
 このあたりは、
「高校生とは思えない」
 と言えるだけの判断力であったり、頭が働くといってもいいだろう。
 それが、まどかという女の子であったが、実際に、その日の夢は、あまりいい夢だったとは思えなかった。
 しかし、
「嫌な夢だったり、怖いと感じる夢というのは、意外とハッキリと覚えているものだ」
 と感じていたが、この日の夢は、何か得体の知れない感覚があった。
 ハッキリとしなぼやけた霧の中をさまよっているような気がしたのだ。
 だから、夢の内容はほとんど覚えていない。
 どんな内容だったのか、覚えていないというよりも、
「忘れてしまっている」
 ということであり、それも、
「どんどん忘れていくということが自分の中で理解できている」
 という不思議な夢だったのだ。
 目が覚めてみると、
「まったく覚えていない」
 というわけではないのに、
「何か曖昧だ」
 ということは、
「肝心な部分を覚えていないからではないだろうか?」
 と感じたが、その感覚に、
「間違いはない」
 といってもいいだろう。
 ただ、
「胸騒ぎのする夢」
 ということを感じたことで、頭をよぎったのが、
「これが予知夢だったのかも知れない」
 という意識だった。
 だから、
「覚えられなかったのではないか?」
 ということで、夢というのが、何かの都合で動いていると感じていたまどかには、その感覚が分かる気がしたのだ。
「やっぱり、私一人ではどうしようもないことだわ」
 ということを自覚していた。
 なるほど、
「探偵さんに頼るしかない」
 ということで、その探偵がどのような人なのかわからないが、父親がわざわざ残していて、そのことを、まどかに話しているということに注目したのだ。
 父親が、探偵のことを話しているのが、本当にまどかだけだといいうことであれば、父嫌とすれば、このことを予知していたのだろうか?
「何かあった時、探偵にすがって、解決しなさい」
 という暗示のようなものだということであれば、納得がいく部分というものがあるということであった。
 実際の胸騒ぎというものがどういうものなのかということは正直分かるわけではなかった。
 ただ、
「今朝見た夢というその中に、探偵のような人が出てきた気がする」
 ということだった。
 会ったこともない人を想像するのは難しいことであり、そのために、目が覚めた時、覚えていないということになったのだろうか。
 夢というものが、都合よくできているということであれば、その理屈も分かっているかのように感じるのであった。
 実際に、探偵という職業の人を、学生が知っているというのもおかしなもので、それこそ、
「近親者に探偵がいる」
 ということでもないと分かるわけもない。
 それは、
「数学者にも言えることで、父親が数学者だから、学者という人に対して、それほどの不可思議な感覚というものはない」
 ということである。
 それにしても、
「数学者と探偵というものの繋がり」
 というのは、どういうことであろうか。
 何かあった時、連絡するということでの連絡交換だったのだろうか?
 すると、父親は、
「何かある」
 ということを予知していた可能性があるということで、
「昨日の夢の内容が思い出せない」
 ということが、気持ちがやきもきするということに近いのかも知れない。
「そんな父親が今どこにいるというのか?」
 まどかはそんなことを考えていると、
「早く、探偵さんに会ってみたい」
 という衝動に駆られるのであった。
 しかし、会ったところで、何を感じるのかということが分かるわけでもないはずなのに、会ったこともない人に、自分が好印象を抱いているという気持ちがあったのだ。
 それを考えると、
「これからどうすればいいのか?」
 ということが分かってきた気がするのだ。
 翌日、予備校に一人の男性が訪ねてきた。内容はすぐには言わなかったが、
「お父さんのご依頼で」
 ということであった。
 前日、父親が帰ってこなかったことで、かなりのショックであったが、
「一人で悶々としていても仕方がない」
 という思いがあったのか、母親には、
「予備校に行く」
 といって、本当に予備校に来ていた。
 実際に、父親が帰ってこなかったからといって、いきなり、
「失踪」
 であったり、最悪は
「誘拐」
 ということまでは考えない。
 もっといえば、
「どこかにいく予定があって、家族に連絡を入れるのを忘れていたのかも知れない」
 とも思ったが、そもそも、
「そんな父親だったら、こんなに心配はしない」
 ということだ。
 筒井教授は、
「今まで家族に黙って、どこかにいったり、そもそも、家に帰ってこないということもなかった」
 出張であればm母親が把握していることになっているし、母親は何も聞いていないという。母親は、どちらかというとm
「父親の秘書的存在だ」
 と言えるだろう。。
 研究に明け暮れていて、研究しか頭にない父親のサポートは必ず必要で、それこそ、
「秘書」
 であったり、芸能人などの
「マネージャー」
 などという存在が必要だったのだ。
 そんな父親が、今回に限って、誰にも何も言わずに失踪するというのは、確かにおかしい。
 これが失踪ということであれば、まだマシということで、何かの犯罪に巻き込まれたなどということになれば、話は別ということになる。
 そういう意味で、本来であれば、警察に通報すべきということであろうが、迷っていると、母親が、
「まだ、その時期ではない」
 といって、娘を制した。
 母親は、父親の行きそうなところに片っ端から連絡を入れた。
 母親は、
「マネーカー兼秘書」
 というだけのことはあって、父親の交友関係は、ほとんど把握していた。
 実際に、名刺なども必ず交換していて、名刺入れから、重要人物から先に、連絡をしていたのだ。
 しかし、ある程度までくると、さすがに疲れたのか、放心状態になっていた。
 それとも、
「ここまで連絡を入れれば、もういいのではないか?」
 というところまで来たのかも知れない。
 それだけに、本当の心配が不安となって襲ってきて、それまでの毅然とした態度が取れなくなっていた。
 それこそ、
「もう自分に自信が湧いてこなくなったのかも知れない」
 それを考えると、
「母親というのも、精神的には弱い人なのかも知れない」
 と、まどかは感じた。
 自分も、そんなにハートが強くないということで、母親のことを言える立場ではないと思っていた。
 しかし、こんな時こそ、母親を支えなければいけないのだろう。
 次の日にはm、母親はせいも痕も尽き果てたように、眠り込んでしまった。そうなると、まどかとすれば、
「自分こそが、普通の生活をするしかない」
 ということになる。
 だから、この日、普段通り、予備校に通ってきたのであって、他の人から見れば、
「いつものまどかでしかない」
 としか思わないだろう。
「人に知られないようにしないといけない」