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必要悪の正体

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「解釈は分かれるかも知れないので、あくまでも、私の意見として聞いていただくしかないと思うのですが、被害者の頭の傷は、車に轢かれた痕ではないかと思うんです」
 というのだった。
 捜査本部は、一瞬ざわついた。
「車に轢かれたということは、それが死因ということになるのかな?」
 と桜井警部補が聞いたが、
「白骨化してしまっているので、何とも言えませんが、胸の傷と頭の傷のどちらが、本当の死因かは、今となってしまえば、分かりません」
 というのであった。
 しかし、これが、事実だとして考えた時、
「胸の傷と、頭の傷のどちらが致命傷か?」
 ということを考えると、これが、事件にとって大きな問題なのかということが言えるだろう。
 つまり、
「胸の傷と、頭の傷とが別の人間によってつけられたものかも知れない」
 といえるわけで、この場合、
「別々に犯人がいる」
 という考え方。
「犯人をかばうために、誰かが偽装した」
 と考えられること、
 そして、
「本当に別々に犯人がいるということになり、その場合、致命傷がどっちだったのか?」
 ということになると、その問題は大きな問題だといってもいいだろう。
 そして、この傷が、一色課長の見立て通り、
「車に轢かれたことによる傷だということになれば、
「本当の真犯人は誰なのか?」
 ということを、いかにして証明するか?
 ということになる。
 だからこそ、この事件における被害者が、
「樹海に埋められていた」
 というのは、大きな意味があるのだ。
「絶対に、死体が見つかっては困る」
 ということからの
「樹海への遺棄」
 ということだったのか、それとも、
「死体発見というものを、遅らせる」
 ということが、大きな問題だということであるとすれば、今回の事件に、どのような影響があるのかということが大切になってくるというものである。
「樹海の白骨死体」
 ということで、自殺では話題になっている場所で、久しぶりに他殺死体が見つかったということで、小さな町の話題としては、十分だといってもいいだろう。

                 遺族の心情

 今回の捜査会議の中で、まだ表に出ていなかったことが、また鑑識からもたらされた。
 というのは、
「死体の身元に繋がるかも知れないものが見つかった」
 ということだったのだ。
 鑑識は、死体発見から後も、付近の捜索を行っていた。
 というのも、
「付近に被害者の遺留品が埋まっていないか?」
 ということからであった。
 被害者が埋まっていた部分を捜査し、白骨付近を捜索したが、まわりからは、何も見つからなかった。
 ということは、
「服を着ていなかった可能性がある」
 ということで、
「後から服を脱がされたのか?」
 それとも、
「元々が、暴行目的で、被害者を蹂躙して、抵抗されたことでの殺害なのか?」
 ということも考えられる。
 ということであった。
 しかし、もし、そうだとすれば、身体に引っかかっている部分で、びりびりに引き裂かれたという服が痕跡として残っていて不思議はないのに、
「まったく服の後が見つからない」
 ということから、
「被害者は、最初から、服を身に着けていない」
 ということになるだろう。
 ということは、
「暴行を受けて、服を引きちぎられた」
 ということよりも、最初から服を身に着けていなかった」
 と言った方がいいかも知れない。
 元々、今の時点では、被害者が、男性なのか、女性なのかということも分からない。
 ただ、暴行ということであれば、女性の可能性も高いわけだが、
「これが、最初から服を身に着けていなかった」
 ということになれば、
「本当に、この被害者が、女性なのか?」
 ということが怪しくなってくるのであった。
 さらに、まわりを捜索していると、そこから出てきたものがあったという。
 どうやら、
「運転免許証」
 のようであったが、肝心な部分はまったく分からなくなっていて、
「身分証明としての効果はまったくない」
 といってもいいだろう、
 ただ、
「運転免許が出てきた」
 ということは、
「どんなに優良ドライバーだった」
 としても、最長でも5年の期間が、更新期間ということになるので、
「更新されていない免許の人を当たればいい」
 ということになる。
 ただ、それを調べるにも、かなりの手間と時間が掛かることは分かっていた。
 何しろ、その免許証は、
「これが運転免許だ」
 ということが分かるだけで、それも、
「大きさから判断して」
 という程度で、その免許証から分かることは、まったくといってなかったのだ。
「当然、指紋の最初も無理」
 ということで、実際には、
「ただれている」
 といってもいいくらいであった。
「こんなひどい状態ということで、分かる範囲は限られていますが、少し事件の輪郭のようなものが見えるのではないかと思えて、この場で発表させてもらいました」
 と、一色課長は言った。
「実際に、判明したことは、会議の寸前だったようで、もし、これらが分からなければ、鑑識からの発表というものは、なかったということになる」
 と考えていたようだった。
 これだけのことが分かったとはいえ、実際の物証が残っているということはなく、完全に、
「事件は、想像の域を出ない」
 といってもいいだろう。
 それでもまだ、
「想像の域とはいえ、考えられるだけの資料があったということは、まだあの場面を調べる余地はあるということであり、それによって、捜査方針も決まってくる」
 ということで、事件も少しずつ分かってくるということであろう。
 実際に、マスゴミには、
「捜査本部を設置して、事件として正式に扱う」
 とは発表したが、
「分かっていることが少ないので、今は諸君に発表できるとこは、これと言ってありません」
 ということであった。
 実際にその通りで、マスゴミも、
「しょうがないか」
 ということで、時期としては、三面記事の下の方に、数行あるだけのことだった。
 これが、少しでも、事件としての体裁が整っていれば、
「小さな町だけに、少々大きな事件として取り上げられたかも知れない」
 ということであった。
 実際に、発表できることもそんなにないわけで、しかも、証拠があるわけではない、
「想像の域を出ない」
 と言われることだけに、記事としては、最低ランクだといってもいいだろう。
 ただ、それを見て、反応する人もいた。
 それが、新聞のマスゴミ効果というものなのかも知れない。
 マスゴミに発表された2日後になって、ある市民から通報があったのだ。
「お姉さんかも知れない」
 ということであった。
 さっそく樋口刑事がその人のところに赴いて、少し話を聞くこと井した。
 その訴えてくれたのは、一人の女性であり、彼女がいうには、
「当時女子大生の姉が行方不明になった時期と似ている」
 ということだった。
「どうして、捜索願を出さなかったんですか?」
 というと、
「後になって、姉から、無事だと連絡があったんですよ。それで大丈夫なのかと思っていたんですが、本当にいなくなったようで、その捜索願は、地元で出しました」
作品名:必要悪の正体 作家名:森本晃次