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限りなく完全に近い都合のいい犯罪

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「夢って、都合のいいものだな」
 という発想に至るのであった。
 だが、それが却って、
「都合のいいもの」
 という発想から、
「それこそ、タイミングではないか?」
 と感じるようになると、
「親父が残したこのタイミングというのは、夢のことではないか?」
 と感じるようになったのだ。
 その頃は、初代が、
「いよいよ危ない」
 と言われ始めたことで、
「不治の病」
 というものを患ったことで、息子に対して、
「そろそろ、言い残すこと」
 というものを考えていたようだった。
 そこで、まだ喋ることができた時期に、息子を枕元に呼び、自分が書き残したものについて、話ができる範囲でしてあげたのであった。
 初代としては、
「息子がここまで分かっているとは」
 と実際に感じたのだが、その時に、話を聞いているうちに、
「こいつは、選択の天才なんじゃないか?」
 ということに気づいてきたのだ。
 しかし、それを、本人に気づかさなければいけないということで、
「直接のアドバイスだけは、厳禁だ」
 と思っていた。
 だからこそ、自分が死にゆくに感じたのは、
「自分が自覚した時のことだった」
 それが、
「夢だったのではないか?」
 と、初代は予感をしていた。
 そして、
「まだまだ息子にはそこに至るだけの経験がないだろうから、分からないだろう」
 と思っていたが、まさか、その時の息子の話から、分かっているとはと実際に、
「感動した」
 ということだったようだ。
 その時、初めて、
「親父に褒められた」
 と思った。
 それまで、あれほど
「昭和の頑固おやじ」
 ということで、
「息子にはそれまでの俺と同じ思いをさせたくない」
 ということで、
「俺が親になったら、息子に、こんな思いはさせたくない」
 と思っていたことで、
「息子に頑固おやじの姿を見せない」
 と思っていたのだが、この時の父親の感覚を思い出させることで、
「親父のようなやり方がいいのかな?」
 と思うようになった。
 そして、結果、
「自分も親父と同じ教育方針になっちまった」
 と感じるようになったのだが、覚えているのが、
「いずれ、息子も同じように、夢の中で、自分を知ることができるようになるんだ」
 ということであった。
 ただ、
「己を知る」
 ということが、本当に自分にとって幸せなことなのか?」
 ということに対しての答えが見つからないと思うようになった。
 久保田親子は、
「子供の頃に見ていた夢と、大人になってから見る夢とでは、まったく種類の違うものだ」
 という考えを、共通して持っていた。
 子供の頃に見ていた夢というのは、
「夢というのは、未来のことしか見ない」
 と感じたことだったのだ。
 実際に、ある程度の頃までは、将来についてしか見ていなかったのだが、これが、ある程度までくると、
「今度は、過去のことをよく見るような気がする」
 と感じたことだ。
 その境界線のようなものを三人とも自覚はしていたが、代が進むにつれて、その境界線が、
「だんだん若くなってきている」
 ということになるのだが、それを知る人はいなかった。
 しかし、一人だけ気づいた人間がいた。
 それが、
「三代目の信二であった」
 信二というのは、途中で、
「志半ばで、不慮の事故で亡くなってしまう」
 ということになるのだろうが、その少し前に、信二は、自分の中で、
「夢というものを理解した」
 と感じるようになったのだった。
 ただ、それが分かったのは、
「先々代で、初代の祖父のことだけだった」
 ということである。
 なぜなら、
「先代の父親は、まだ生きているからではないか?」
 ということも、その時の信二には分かっていたようだった。
 そのことを、なぜ、そう思ったのかというと、
「父親が生きている」
 ということを、夢の中で意識し、夢の中に出てきたのが、祖父だったことで、まるで自分が神様になったかのように、いきなり頭の回転が早くなり、そのおかげで、天才的な発想ができていると考えた時、
「俺の命も、短いのではないか?」
 という、いわゆる、
「ネガティブな気持ち」
 になってくると、
「さらに、頭の回転が早くなってくる」
 ということで、
「俺は、そのうちに死んでしまうんだ」
 と漠然と感じたが、不思議と、
「死ぬということを怖い」
 と感じたわけではないのであった。
「自分が、死を選んだ」
 ということであれば、許されることではないが、
「天命によるもの」
 つまり、
「寿命」
 ということであるのであれば、それは、甘んじて受け入れるということになるのではないだろうか。
 久保田信二にとって、
「夢というのは、自分を正す唯一の手段」
 とまで考えていたのだ。
 しかし、その思いが、どこでどう狂ってしまったのか、交通事故で死んでしまうということになった。
 それが、
「必然なのか、それとも、偶然のなせるわざというべきなのか?」
 それは、誰に分かるというのだろうか?
 もちろん、捜査に来た清水刑事にも、河合刑事にも、想像できるものではない。そもそも、夢というものを
「非現実的なもので、非科学的だ」
 と考えているということを思えば、久保田親子、いや、久保田一族の考えていることなど分かるはずもないということであった。
 ただ、それでも、久保田氏までの二代においては、何とかうまく行っていたが、三代目ということになる信二は、どこで歯車が狂ったというのか、
 久保田氏にしてみれば、
「生きてさえいれば、何とかなったものを」
 と思ったかも知れない。
 ただ。久保田氏が語ったところによると、
「息子の信二と、嫁とでは、どうにもうまく行くということはないように思えた」
 ということであった。
「あくまでも、平行線でしかなく、息子は立ち直れない限り、わが久保田家の将来もないだろう」
 と言っていたのだ。
「そんなに、無理な状態なのか?」
 ということを聴くと、久保田氏は、恐ろしいことをいうのであった。
「あいつは、どうやら、詐欺グループの一員になっているようなんだ」
 ということを言った。
 それを聴いて、清水刑事も、河合刑事も、お互いに顔を見合わせたが、
「詐欺グループって、どんなグループなんですか?」
 と訊ねると、
「どうやら、怪しげな宗教団体に身を隠して、そこから、信者を増やし、お金を引き出させるというやり方ですね」
 と久保田氏は言った。
「それって、最近よく流行っているやり方じゃないですか?」
 と河合刑事がいうので、
「ええ、私は、詐欺グループに入っているということよりも、あいつが、皆がやっているようなことを真似ているようなグループにいるということが許せないんですよ」
 というのだった。
 詐欺を行うという、
「非人道的な行動」
 に対しての文句があるというわけではなく、それよりも、
「他の連中と同じ」
 ということに対して、気にしているということで、清水刑事は、
「何を考えているのか分からない」
 と思っていた。
 しかし、河合刑事にしてみれば、
「久保田氏の考えは分かる気がする」
 と思っていた。