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限りなく完全に近い都合のいい犯罪

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「誰であっても、声を掛けてくれた人のいうことを聴く」
 というようになるのだった。
 実際に、声を掛けてくるやつがいて。その連中を危ないと思ったことで、何とか悪い仲間に入れられずに済んだわけだが、
「それと同じことが自分の息子に起こった」
 ということを、久保田氏は知らなかった。
 そのことを知ったのが、息子が、高校を中退しようとした時のことだった。
 実際には中退を辞めて、とりあえず大学も卒業できたことで、コネ入社までこぎつけたわけだが、それは、
「バカなことは辞めよう」
 と感じたからではなく、
「とにかく怖い」
 と思ったことから、逃げようと感じたからであった。
 そもそも、人とトラブルを起こすということは避けるようになり、人のいうことは、相手が少しでも、高圧的に出てくれば、逃げられないと思うようになり、そのせいもあってか、
「逃げれる状態になれば、徹底的に逃げてやる」
 と感じるようになったのだ。
 そのせいで、世の中の恐ろしさというものを、感じるようになり、一つ考えるようになったのが、
「敵の敵は味方だ」
 という考え方だった。

                 夢の正体

「逃げようとして、また逃げれば、速度が倍になって、見えなくなる」
 という発想もあるが、逆に、
「一周すれば、元のところに戻ってくる」
 という発想から、
「敵の敵は味方」
 という発想が身に着いた時期があったのだ。
 それが、中学時代に、自分がいじめられそうになった時のことである。
「とにかく逃げるしかない」
 という発想が、一直線の発想しか生まないことで、狭くなった視野を、
「どうにかしないといけない」
 と考えるようになると、
「自分がどのようにすればいいか?」
 ということを考えた時、
「父親が話していた言葉を思い出したのだった」
 というのは、
「自分が学校でいじめられていることを、親には知られたくない」
 と、信二は思っていた。
 しかし、信二の様子が何となくおかしいということに気づいた久保田氏は、
「自分のことはよく分からないが、他人のことなら結構分かる」
 と思っていたのだが、その思いが、
「本当の他人ではなく、肉親であれば、余計によく分かる」
 ということで、
「息子の信二のことだけは、誰よりも分かる」
 と思うようになると、実際に、
「手に取るように分かってきた」
 ということだったのだ。
 最初に感じたのは、
「何かを隠している」
 ということだった。
 これくらいであれば、
「親であれば誰にだって想像がつくというものだ」
 ということで、そこまでまだ自分の能力がでていないことを分かっていた。
 だが、問題はここからと思っていて、そこで、久保田氏のいつものやり方は、
「山をはる」
 ということであった。
いわゆる、
「ヤマ勘」
 でいうものである。
 一つのことに焦点を当てて、それを第六感ともいうべき発想になぞらえる。そのためには、自分が感じたことに絶対的な自信を持つことであった。
 普段から、逃げ腰で、そんな自分が自信を持つためにはどうすればいいのか?
 それは、一つしかない。
「実績を作る」
 ということであった。
 最初は、
「自分の感じたことが、間違っているということであれば、思った通りの形にすればいい」
 ということだ。
「そんな魔法使いのようなことができるというのか?」
 ということであるが、
「やり方によっては、自分の範疇にあるものであれば、使いようがある」
 ということであった。
 となると、
「自分の言うとおりにする相手を手に入れればいい」
 と考えた。
 信二は、実は、頭の回転がずば抜けていい男だった。
 久保田家三代の当主に、いわゆるそれぞれに、違った才能があったようだ。
 創業者である初代社長は、
「思い切ったことをやれば、誰にも負けない」
 という素質があった。
 そして二代目である、久保田氏には、
「選択に関しては、右に出るものはいない」
 と言われていたのだ。
 ギャンブル的なところがあり、本当は、三代目の信二が、
「自分にあるものではあいか?」
 と感じたものだということであったが、実際には、
「父親にあった」
 ということであった。
 それらの素質を、家族の誰もが知らない。
「一緒に仕事をしている片腕と言われる人たちであれば、分かっていたかも知れないが、それも、半信半疑だったに違いない。
 では、三代目になるはずだった信二はどうだったのだろう?
 信二は、
「頭の良さ」
 と、
「潔さ」
 というものにかけては、誰にも引けを取らなかった。
 実際に、その、
「潔さ」
 というものが、功を奏した時期があったのだが、結局、交通事故とは言いながら、
「死んでしまう」
 ということにならなければ、それなりに、
「三代目」
 ということで、いい三代目になったかも知れないといえるだろう。
 ただ、これは、息子が親のことを分からないということではあったが、逆に、
「親が子供のことを分かっている」
 ということでもあったのだ。
 しかし、これは、
「親になったら、分かるとはいえ、親がそれを子供に明かしてはならない」
 ということは、
「先代からの教訓」
 ということで、
「久保田家の家訓」
 というものになっていた。
 これは、
「当主となってから、親からいわゆる、跡目相続を受けた時に、先代から伝えられるものだった」
 といってもいい。
 実際に、
「そんなバカな」
 と思った。久保田氏であったが、最初こそ、
「こんなもの」
 ということで無視していたのだが、自分が当主となり、まわりに気を配れるようになり、次第に、
「何か人より長けたものがなければ、自分が当主として、誰も認めてくれない」
 と感じた時、久保田氏は、
「自分には選択の際の天才的な才能がある」
 と感じたことがあったのだ。
 それは、まるで実にうまいタイミングで感じるものなのだが、そのタイミングも、
「それとなく分かる」
 と、先代からの教訓に書いてあった。
 さすがに、最初こそ、
「そんなの信じられるものか」
 ということで考えていたとしても、結局、
「自分が他の人にも増して、いいところを持たなければ、自分はここで終わってしまう」
 ということに、嫌でも気づくことになるというものだ。
 そうなれば、嫌でも、先代からの教訓を読まないわけにはいかない。
 しかも、
「今となってそれを読むと、分かってくるところが出てくるものだ」
 と感じたのだ。
「親父はそれを分かっていて。必ずどこかのタイミングで読むだろう」
 ということで書き残したのではないか?
 と感じたのだ。
 だから、それを読むことで、最終的な答えまで得ることはできないが、ヒントくらいは得ることができる。
 その答えというものも、
「タイミングは必ずあるはずだ」
 と書かれていることで、そのタイミングを逃さないようにすることに神経を集中させていたのだ。
 そう思って考えているうちに、その頃から、
「よく夢を見る」
 と感じるようになる、
「夢というものは、目が覚めるにしたがって忘れていくものだ」
 ということで、