死体損壊と、犯罪の損壊
ということになり、戦時体制として、
「大本営」
というものが作られる。
これは、陸軍の作戦を立案する
「参謀本部」
と、海軍の作戦を立案する、
「軍令部」
というところが一緒になって、軍全体の本部ということで設立されるので、
「大本営発表」
というのは、軍部の発表ということになるのであった。
そんな時代に、経済による混乱と、さらに、社会主義である、
「ソ連の台頭」
そして、ヨーロッパにいける、
「ナチスに代表されるファシズムの台頭」
というものがある。
ファシズムというのは、イタリアで始まったものであるが、完成系を見たのは、やはり、ドイツにおける、
「ヒトラーによる、ナチス党」
というものであろう。
そもそも、ナチス党の台頭というのは、第二次大戦が起こる、わずか20年前に終了した、
「第一次大戦」
というものからの起因である。
その時、勝戦国である連合国側が、敗戦国であるドイツに対して、その賠償金であったり、植民地を手放すようなことをして、
「国家転覆に近い」
という形の処遇を行ったことで、ドイツ国家は疲弊してしまった。
本来であれば、
「これで戦争を起こすということができなくなった」
という単純な考えであろうが、ドイツ国家の混乱は、そんなものでは済まなかったといえるだろう。
戦争ができなくなったのはいいが、根本的な生活ができなくなってしまい、さらにそこに世界恐慌が追い打ちをかけ、世界全体が、不況ということで、アメリカが中心の、
「持てる国」「
だけで生き残りをかけるという、
「ブロック経済」
というものを敷いたのだから、
「持たざる国」
としては、こちらも生き残りをかけて、国内をまずどうにかしないといけないということから、
「今までの中ぬるい政府では、どうしようもない」
ということで、
「強い政府」
を望んだのだ。
そこで、ヒトラーが台頭してくるわけだが、彼が掲げるのは、
「ドイツ民族による強いドイツの完成」
というものだった。
今まで、敗戦国として虐げられていたものを、強い政府が、今まで虐げてきた連中を見返そうとするのだから、今までの体制では難しい。
しかも、敗戦前までというと、王国だったわけで、そこから民主国家となったわけだが、
「民主国家というものが、自分たちの生活をいかに、何とかしてくれるということになるのだろうか?」
ということであった。
そこで国民が望んだのは、
「強さ」
ということであり。そのためには、
「一党独裁」
であっても、かまわない。
つまり、ナチス党というものが、一党独裁となり、他の政党を認めないという、本当の、
「独裁政治」
であっても、
「一人のカリスマ性を持った指導者がいれば、諸外国に立ち向かえる」
ということであり、さらに、
「ドイツ国民を唯一の民族」
という考えで、国家を統一しようとする考えが、
「今のドイツを困窮から救うためには不可欠だ」
ということになるのだ。
しかも、ユダヤ人への不満も、ドイツ民族はそれぞれに持っていただろうから、ナチス党が、
「ユダヤ人迫害」
というホロコーストを起こしたとしても、それは、
「悪いことではない」
と思えた。
しかも、プロパガンダや、演説によって、
「ドイツ民族こそが、世界の覇者」
のような言い方をするのだから、ナチスが独裁政権を敷き、ヒトラーが、
「総裁と大統領を兼ねる」
というような、
「総統というものになったとしても、それはそれで、強い指導者を得たことで、頼もしいカリスマ性だ」
と思ったことであろう。
それを考えると、イタリアというのも、
「かつてのローマ帝国を復興させる」
というような、民族性に訴えた政権である、ファシスト党を率いる、ムッソリーニという人も、ヒトラーと同じだったのだ。
ただ、日本の場合は少し違っている。
ヒトラーや、ムッソリーニのような
「絶対的なカリスマ性を持った人物」
というものがいるわけではないが、
前述のように、
「日本には、軍部が政府と独立していて、軍部が、国防の観点から、他国を刺激するようになり、それによって、引き起こされた満州事変によって、成立した満州国を認めないということで、日本は、国際連盟から脱退し、孤立の道を歩む」
ということになったのだ。
しかも、日本というのは、基本的に、
「アジアの盟主」
を狙っていた。
「満州国建国」
というのも、その一つで、いつからか、
「欧米に植民地化されている東アジアを欧米から解放し、日本を中心とした新秩序を建設する」
という、
「大東亜共栄圏」
というものを確立するという考えが芽生えていたのだ。
だから、ヨーロッパで、比較的考え方の近いドイツ、イタリアと同盟を結んだことは、無理もないことであろう。
もっとも、それに対しては、かなりの反対があったのも事実ではあった。
今の時代に、歴史で習う、
「日独伊三国同盟」
というものを聞いた時、
「よくも、こんな悪魔のような国家と同盟を結んだものだ」
と思った人もたくさんいるだろう。
しかし、この当時は、戦争のたびに、結びつぃく国が違っていて、どっち側につくかということは、
「やってみないと分からない」
ということで、特に、
「欧州戦線は、意味不明」
といわれた時期があったくらいだ。
主義やイデオロギーが違っていても、ただ、
「目指すその時の目的が同じ」
というだけで結びついて、それが終われば、勝手に不可侵条約を無視して、侵攻するというようなことが、平気で行われていたりしたのだ。
大日本帝国というのは、そのあたりは毅然としていたところがあっただろう。だからこそ、
「アメリカが、日本を世界大戦に巻き込むことは、容易だ」
ということで、経済制裁などということを平気で行ったのだろう。
だから、日本が起こした戦争は、決して、
「太平洋戦争」
ではなく、閣議決定された、
「大東亜戦争」
というものなのである。
そんな時代、しかも戦時中は、娯楽の制限は激しかった。小説なども、探偵小説などのジャンルは発禁になったり、それまで売られていたものも、廃版となったりした。当然、
「食うに困る」
というわけで、
「苦肉の策」
ということで、
「時代小説」
というジャンルを書くしかない作家もいたくらいだった。
いわゆる、
「当局」
といわれるところは結構厳しく、出版界も大変だったことだろう。
食べるものも配給制で、ほとんどその配給も回ってくることもなく、若い男性は、どんどん兵隊にとられていき、そのうち、金属類回収ということで、家庭の金属を国が回収し、武器弾薬に変わっていくというわけだ。
そして、大本営発表ということで、日本軍は破竹の勢いで、敵を撃破しているというわりに、暮らしがよくなるところか、どんどん厳しくなっていくではないか。
さらに、そのうちに、今度は、毎日のように、大都市は空襲にさらされる。そのうちに、
「本土決戦」
「一億総火の玉」
などという、国家的な玉砕を匂わす状態になってきた。
さすがに、ここに及んで、
「大本営発表」
作品名:死体損壊と、犯罪の損壊 作家名:森本晃次