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死体損壊と、犯罪の損壊

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「将来有望」
 と目されている下瀬刑事であった。
 要するに、
「将来有望な下瀬刑事を、中堅クラスで、後輩の指導も任されている八木刑事が、
「ビシビシ鍛えている」
 ということであった。
 実際に、事件の話になると、
「最近は、下瀬刑事の考えが、結構的を得ていたりするな」
 ということで、教育係といってもいい八木刑事としても、
「舌を巻いている」
 というほどであった。
 だからと言って、
「下瀬はすごい」
 ということを本人に思わせて、増長させるというのは、本意ではない。
「本人が自信を持つ」
 ということはいいことであるが、だからと言って、
「うぬぼれというのは禁物だ」
 ということで、八木刑事は、
「できるだけ自由にやらせながら、様子を見ている」
 というとことであろうか。
 だから、八木刑事は、一緒にコンビを組みながら、いろいろな証拠が出てくるたびに、
「下瀬は、この状況をどう思う?」
 といつも意見を求めるようにしていた。
 普通であれば、
「半分意見を聞いている」
 ということなのだが、下瀬刑事に関しては、
「ほぼ、その意見を鵜呑みにしている」
 と言ってもいいだろう。
 しかし、だからと言って、すべてを信じているわけではなく、
「聞き入れる部分はしっかり聞き入れる」
 ということをしているつもりだが、結局、いつも、そのほとんどに信憑性があり、それだけ、
「彼の理屈は一本筋が通っている」
 ということになるのだった。
 だから、八木刑事は、今回も、話を聞いてみた。
「下瀬君は、どう思うね」
 と聞いてみたが、下瀬刑事としても、
「そら来た」
 と感じたことだろう。
 これだけ毎度のことだと、分かるというものだ。
 だから、門脇に話を聞きながら、自分の中で、整理できるところはしていたつもりだった。
 しかし、今回は、
「門脇自身が、肝心な記憶を失っている」
 ということで、必要以上の話が利けるわけではなかったのだ。
 それを考えると、
「まだ何とも言えませんね。でも、あの門脇さんという被害者は、何かを知っている可能性は高いんじゃないかと思うんですよ。もっといえば、頭がいい人だと思うんですよ。そう思うと、彼が狙われたのは、何かを見たから狙われたというよりも、どちらかというと、
何かに気が付いたということから狙われたのではないかと感じるんですよね」
 というではないか。
 それを聞いた、八木刑事も、
「その件、つまり、門脇さんが、頭のいい人だというのは、私も分かっているつもりなんだけど、ただ、彼がこの事件において、どういうかかわりがあるのかということが分からない以上、今は何も言えないと思うんだよね。そういう意味でも、記憶を早く取り戻してほしいと思っているんだがね」
 というと、
「そうですね。でも、私は彼の記憶に関しては、そこまで期待はしていないんですよ。ひょっとすると、その記憶が事件の核心を掴んでいるものなのかも知れないと思うんですが、それには、もう一つ、門脇さんという人間の中のもう一つの扉が開かれないと、せっかくの記憶が、役に立たないということにならないかと思うんですよね」
 と下瀬刑事はいった。
 それを聞いた八木刑事も、頷いていたが、ただ、今は記憶がない以上なんともいえない。
「もう一人の被害者というか、門脇さんを殴ったとされる男はどうなったんでしょうね?」
 と、もう一人の男の方が傷が深く、昨日の段階で、まだ、意識が戻っていなかったではないか。
 同じ病院に入院していて、
「意識が戻れば警察署に連絡がいくようになっていて、刑事が事情聴取に来るように手配はしていた。
 今のところ、
「意識が戻った」
 という話も聞いていない。
 というよりも、その男がどこの誰なのか?
 ということも分かっていないという。
 身元を示すものは、何一つ所持していないようで、昨日、
「緊急手術」
 を行った時、衣類を着替えさせた時、衣服や荷物を調査されたが、その時は、身元を示すものが何もなかったということであった。
 手術は、何とか成功し、
「命に別状はない」
 ということであるが、意識はまだ戻ったとは聞いていない。
 もっとも、意識が戻ったとしても、緊急手術を行ったわけなので、そうすぐに、警察の事情聴取ができるとは思えない。医者からも、
「数日は、無理かも知れませんね」
 ということであった。
 とりあえずは、被害者二人の指紋を調べられ、凶器と思しきスパナのようなものの志毛照合が行われたが、ここで不思議なのは、
「門脇の指紋は検出されたが、加害者と思える男の指紋は検出されなかった」
 ということである。
「あの男は、、手袋などしていなかったので、もしあれが凶器だとすれば、指紋がついていないとおかしいんだがな」
 ということであった。
 ということになれば、
「犯人が、手袋をどうして持っていく必要があるというのか?」
 ということであった。
 状況から考えて、あれが凶器であることは間違いない。だから、指紋がなければ、
「手袋をしていた」
 と考えるのが自然なので、そんな分かり切っている手袋を、わざわざ時間をかけて外していくようなことをするだろうか?
 犯人とすれば、
「一刻も早く、現場から逃げ出したい」
 というのが、犯罪者心理というものではないだろうか?
 それを考えると、
「どうして、わざわざ手袋にこだわったのだろうか?」
 ということになるのだ。
 実際に、鑑識の発表では、
「凶器にはルミノール反応があり、2種類の血液があったようだ」
 ということであった、
 一人は、今昏睡場や胃にある、
「犯人であり、被害者である男のもの」
 ということであり、もう一つは、
「門脇氏のもの」
 ということが分かっている。
 そもそも、二人の血液型は違っていたことで、そこは安易に想像できた通りであった。
 そんな情報が、八木刑事にも、下瀬刑事にももたらされていて、それを考えると、
「二人の関係がどうであれ、少なくとも、凶器は、その場に打ち捨てられていた」
 ということであった。
 そもそも、
「犯人はなぜ、凶器を持ち去ろうしなかったのだろう?」
 指紋がついていないのは、分かっていることだし、わざわざ手袋を外して持ち去るようなことをしてまで、時間を食っているのにである。
 ちなみに、手袋を外した可能性はかなり高いといえるだろう、手首のあたりに、人の爪のようなもので傷つけられている痕が残っていたからだ。
 これも、医者が見ればすぐに分かるということ。不思議といえば不思議だった。
 下瀬刑事は、一つ気になっていることがあった。
「今回の事件は、殺人事件ではないということなんですよ」
 というではないか。
「というと?」
 と八木刑事が聞くと、