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無限であるがゆえの可能性

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 そのおかげで、それまで暗かった自分が、少し明るい性格になれたのだった。
 元々、子供の頃から、推理小説のようなものが好きで、まだ、暗い性格になる前の、中学一年生くらいの頃は、よく友達と、
「謎解きの本」
 というのを図書館で見て、
 友達と二人で、楽しんでいたのだった。
 だが、二年生になるとその友達が、
「親の会社の都合」
 ということで、遠いところに引っ越してしまったということで、島村は、
「孤独」
 というものを味わうことになったのだ。
 その頃から、自他ともに認める、
「暗い少年」
 ということになったのだ。
 その頃というと、成長期であり、いわゆる、
「思春期の入り口」
 ということもあって、精神的にも肉体的な変化に対しても、微妙な時期だった。
 そのことに気づかないでいると、高校生になってからの、自分の暗さが、
「まわりとの関係から、錯覚も混ざってきている」
 ということに気づかないようになっているのであった。
 それを考えると、自分が、
「大学受験というものに、必要以上の違和感を感じているからだ」
 と思うようになったのだ。
 だから、大学入試も、ランクを思い切り下げたのだ。
「大学入試に、浪人などすると、俺の神経が持たないかも知れない」
 という思いからだった。
 親は、幸いにも、島村に対して、
「必要以上の過度な期待はしていない」
 ということだった。
 島村は、
「昔でいう教育ママのような家庭は異常だ」
 と思っていたのは、自分の親が、そこまで子供のことを真剣に考えていないということに感謝したいくらいだと感じていたからだ。
 高校生くらいになると、親が子供に対して、
「過度な期待」
 というものをするのは、
「母親が、自分のマウントが他の人に子供のことで取られるのを嫌がっているからだ」
 と思っているのと、
「お父さんのような大人になっちゃダメ」
 ということで、この場合も、
「父親の出世であったり、会社のレベルで、自分たちの世界のマウントが決まってくるのだ」
 と考えるようになったことが
「大きな理由だ」
 と思うようになっていた。
 だから、そんな母親の世界を、
「反吐が出るほど、嫌気がさしていた」
 といってもいい。
 幸いにも母親はそんな、マウント合戦のような世界には興味がないのか、まったく近寄ろうとはしない。
 一人で孤独に見えるのだが、母親だけは、
「孤独を感じさせない」
 と思っていた。
 それは、母親が、
「そんな世界に入り込もうとしないからだ」
 ということであり、
「母親の持って生まれた性格ではない」
 と思っていたのだ。
 これが、そもそもの、
「人間としての。性格」
 というものを読み間違えていた最初だったのかも知れない。
 小学校、中学校の頃は、成績がよく、
「勉強をすればするほど成績は上がり、順位も上がっていく」
 ということが、楽しくて仕方がなかったのだ。
 だから、中学生の途中くらいから、友達が引っ越していった時に、一段階目の暗さが襲ってきて、
「高校に入学してから、本格的な暗さがにじみ出てくるようになった」
 といえる。
 しかし、
「まわりも、同じように暗いので、本人が自分の暗さを自覚している分、まわりとの差に、そこまで気にはしていなかった。気にならないわけではなかったが、それがどうしてなのかということを気にするまでにはなかった」
 ということだったのだ。
 それが、島村にとっての、人生の傾斜の第一歩だったのかも知れない。
 島村という男は、
「大学生になってから精神的な余裕ができたこと」
 と、
「入試というプレッシャーから解放された」
 ということから、
「中学時代に好きだったものを思い出した」
 のであった。
 そして、自分が暗くなった理由が、そこから始まっているということに気づいたことで、
「もう一度、ミステリーの研究をしてみよう」
 と思ったのだ。
 幸い、大学には、いくつかのミステリーサークルがあった。
「皆でミステリー小説を読んで、その感想を言い合う」
 というような標準的なサークルから、
「自分たちも、ミステリー小説を書けるまでになりたい」
 という、
「ミステリー作家養成」
 といったことを目的にした、少し突っ込んだ形のミステリーサークルもあったのであった。
 島村は、それよりも、
「小説というものよりも、トリックや謎解きに、特化したようなところで、皆といろいろ犯罪というものを考えていきたい」
 と考えるようになったのだ。
 そんなサークルも存在した。
 というよりも、むしろ、
「大学サークルというところは、そういう学問の研究というようなサークルがあってしかるべきだ」
 と思っているので、最初から、
「探せばあるだろう」
 と思うようになっていたのだ。
 そのサークルには、いろいろな仲間がいて、何と、中学時代に親の転勤で別れてしまった友達がいたのだ。
 同じ大学というのが、信じられないような偶然ということであり、
「同じサークルにいた」
 というのは、
「大学が同じなら、別に不思議なことではない」
 ということになるのであった。
 そのことは誰よりも、二人が分かっていることであって、それでも、
「偶然の再会である」
 ということに変わりはなく、お互いに。その喜びは、表現できるものではなかったのだ。
 それを考えると、
「大学時代が中学時代までの明るさが取り戻せるような気がする」
 と感じたのだが、それも当たり前のことで、
「その前兆というものが、この偶然の再会が、表しているに違いない」
 と感じさせたのだ。
 これは、
「感じたのではない、感じさせたのだ」
 ということで、それだけに、自分の中で信憑性を感じさせた」
 それを思うと、この感覚は、裏付けだと思ってもいいということになるであろう。
 そんな大学時代において、入ったサークルで、島村と友達は、まるで、
「水を得た魚」
 のように、発想が湯水のように浮かんできた。
 それは、中学時代に、成績が良かったことで、
「自分は、頭がいいんだ」
 と、まわりには言えなかったが、その発想が強かったことで、それが却って高校入試の時にあだになってしまったのだったが、
「もう大学に入ったのだから、時効だろう」
 というように、
「上を見ればきりはないが、自分に自信を持ち、自惚れるくらいの方が、明るくて、今までにない発想が生み出せるような気がして仕方がない」
 ということであったのだ。
 二人は、サークルの中で、人間関係も、崩すことなくうまくやっていたと思っていた。
 実際に、ぎくしゃくしたこともなかったし、二人と会話する人も多かったのだ。
 それでも、
「二人は二人」
 他の人たちのそれぞれの、
「絆」
 というものとは一線を画していたといってもいいだろう。
 そんな状態で二人は、サークル内で、いろいろな殺害方法などを研究することに没頭していた。
 あまり、中学高校時代と、ミステリーというものから遠ざかっていた島村と違って、友達の方は、
「いろいろ自分なりに研究していた」
 と豪語するだけあって、かなりの探偵小説から、ミステリー小説と、読み込んでいるようだった。