国家によるカプグラ症候群
「あの世で、地獄と言われるものと、この世での地獄が、そう変わりないものだとすれば、あの世に期待をかけるという方が間違っている」
とどうして誰も思わないのだろう?
「今を救ってくれないものを、どのように信じればいいものか?」
ということであり。
「そんなわけ分からない発想をいかに、宗教として崇めればいいのか?」
と考えた時、
仏教思想とすれば、
「この世の地獄を、修行することで、耐え縫いて、あの世に行った時には、悟りを開いている」
とでもいうような、一種の修行僧のような発想があるのではないだろうか?
だから、仏像の中に、
「如来様」
と、
「菩薩様」
というのがあり、
「如来様は、すでに悟りを開いたお坊さんで、菩薩様は、いずれは悟りを開くということが許されている菩薩様がいる」
という発想になるのだ。
だから、菩薩様と言われる、
「弥勒菩薩」
であったり、
「観世音菩薩」
などという、いろいろな種類の菩薩様がいたりする。
特に仏教思想というと、キリスト教よりも、さらに、
「死んだ後の思想の方が強いのではないか?」
と考えられるが、さすがに、そこまで勉強もしていないし、悟りを開くまではまったく考えていない人にとっては、どうしても、宗教というと、
「胡散臭くしか見えてこない」
ということになるだろう。
そんな胡散臭い中にあって、秘密警察が内偵を始めると、
「これは、宗教団体ではないか?」
ということが分かってきた。
もちろん、秘密警察の中でも、かなりの確率で、ここが宗教団体であるということは大体の想像はついていたが、
「宗教団体ということで、あまり表立ったような奇抜なことはしないだろう」
というのも分かっていたが、実際に入ってみると、そのすごさが分かってきたような気がしたのだ。
それは、
「奥に入れば入るほどひどいもの」
といってもよくて、しかも、奥に入る途中に、節目のようなものがいくつもあり、そこが、まるでつっかえ棒のようになり、その先にあるものが、
「段階を踏む」
という形になり、力を他に向けているように見せながら次第に掻き出していくという感覚になっているのであった。
その内容は、まるで、パラソルのようで、放物線を描いているように思えた。
「どっちの方向に広がっても、フォローできる」
という感覚といえばいいのか、それぞれに
「節目による発達」
ということで、
「わらしべ長者」
のようなものだといえるのではないだろうか?
そんなことを考えていると、
「最後にもう一押し、何かがあるのではないか?」
と考えていた。
そこで、その効果を薬に求めるであれば、それは、一種の、
「覚醒剤」
ではないか?
と考えた。
それは、反政府組織や、かつてイギリスが清国に売りつけて、清国の滅亡を早める起点となった
「アヘン」
などのような
「麻薬」
という意識よりも、もっと別の意味での、
「覚醒」
つまりは、
「眠らないでも平気だ」
といえるようなものがあると考えると、
「宗教団体は、反政府組織と同じく、薬物を自分たちの目的のために使うのだということになるのだが、実際には、少なくとも、宗教法人ということで、いくら裏に回るとはいえ、大っぴらに事を起こしてしまうと、警察に目を付けられるだけではなく、
「信者獲得にも支障をきたし、今の信者も離れていくことになる」
ということになるだろう。
だから、
「覚醒剤」
と一口に言っても、
「麻薬」
というイメージではなく、どちらかというと、
「スタミナドリンク」
というような、
「眠ってはいけない」
という仕事を抱えているような、バブル全盛期と呼ばれる頃に、
「企業戦士」
と言われる人が、24時間戦うために飲む栄養ドリンクという意味でそれを使っているところも少なくない。
だから、宗教団体でも、企業戦士というものに使われていたのと同じような効果のあるものを、何に使うというのか、それが問題だったのだ。
それが、宗教団体の、
「裏の顔」
の正体のようなものだといってもいいだろう。
「怪しい薬」
を作っているところは、その宗教団体が、裏でやっている組織であった。
そこは、工場のようなものを持っていて、以前から、周辺住民であったり、警察も気を付けるようにしていたが、それを取り締まるだけの法律がなかった。
捜査令状も取ることもできず、手を出すことができない。
それが、時代としては、今から、数十年前のことだった。
しかし、その宗教団体は、明らかなテロ組織で、その工場で作っていた薬を使って、実際にテロを起こしたのだから、それは大変なことだった。
しかも、その動機が、
「警察や、世間の目をごまかすため」
というのが目的だったのだ。
しかし、それだけのために、つまりは、ただの、
「時間稼ぎ」
だけでしかないということを、教祖も分かっていなかったのだろうか?
ただ、それだけのために、
「毒ガスを密閉された場所で撒く」
という、凶悪犯罪を引き起こしたのだ。
「何の罪もない人が、後々、後遺症で苦しむ」
あるいは、
「ただの第一発見者でしかない人が、まわりから犯人ではないかと疑われ、家族が犠牲になったにも関わらず疑われる」
などという、理不尽なことになったのだ。
「世界的なパンデミック」
における、
「黒いウワサ」
ほどの信憑性はないが、それでも、実際に判明したこととして、
「この時疑われた人が、一番の被害者だった」
ということになる。
今では、そんな犯罪は、
「テロ行為」
という認定で、法律も、
「テロ行為防止」
に関する法律をやっと整備したので、今では、そんなことがあれば、捜査は初動捜査の段階からできるようになった。
だから、このような、
「国家反逆罪」
というものに匹敵するような犯罪がなかなか起きることもないだろう。
ただ、その時に、ある程度まで何もできないくらいに解体されたその団体が、最近、地下組織として蠢いていることが、内偵される段階で分かってきた。
「まさか、あのテロ組織が暗躍していたなんて」
ということであった。
実際には、あの時の中心人物は誰も、もうこの世にはいない。
捕まって、裁判で死刑になり、実際に、執行されてから、かなりの期間が経っている。
それを思えば、
「あの時代は、歴史の1ページでしかない」
というくらいに、
「過去の話」
ということであった。
「風化させてはいけない」
ということで、自然災害と同じように、語り継がれるほどの、
「テロ行為としては、当時、世界中でも、震撼されたことだった」
といってもいいだろう。
ただ、当時は、ちょうど、
「ソ連が崩壊」
することで、
「社会主義国というものが、勢いを急激に減らし、仮想敵となっていたものがなくなってきたかと思うと、今度は、戦争の代わりに、テロというものが戦争にとってかわるということになった」
ということであった。
そんな団体は、元は、宗教団体であったが、それが、宗教色をなくし、他の国の諜報活動に近い、
「秘密結社」
作品名:国家によるカプグラ症候群 作家名:森本晃次