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「三すくみ」と「自己犠牲」

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 そして、少し早歩きをしたからか、少しつんのめるような形になり、慌てて、脚をガードレールに描けた時、
「あれ、思ったよりも、高いようだ」
 と思い、慌てて、バランスを取るようにして、脚を必死に引っ掛けたのだった。
 すると、バランスを崩して、背中がの削るようにして、身体が傾いたのだが、その時、無意識にバランスを崩そうとするところを、後ろにひっくり返りそうなところを、必死でこらえているのを感じたのだ。
「大丈夫ですか?」
 と言って、ふいに声を掛けられた時、思わず、後ろに体重が掛かったのだった。
 後ろを振り向きそうになり、身体をひねって、堪えようとした時、バランスを崩して、後ろにひっくり返った。
「あいたた」
 と、腰をひねって立ち上がろうとした時、もう一度、後ろによろめいて、そのまま、歩道側に倒れこんだ。
 そこに、一台の車が、飛び出してきたのだ。
 まったく予期していなかったが、どうも、声を掛けた人は、その危ない様子も見ていたようで、急いで駆け寄ってくれた。
「本当に大丈夫ですか?」
 というのを聞いて、さすがに自分の置かれた状況に、信二は気づいたようだった。
「えっ、僕は」
 と言って、車が通りすぎて行ったところを、ゾッとするように感じたまま見送っていた。
「本当に恐ろしい目に遭ったのか?」
 と、恐ろしさを感じていると、声をかけた人には、すべてが見えたようで、
「あなたが、思っているよりも、さらにひどい状況でいた」
 というではないか。
 その人も、その時に見た一部始終を話してくれた。
 その内容というものが、どれほどのものなのかを聞いてみると、
「どうやら、危険な状況にあったのは、一度ではなく、最終的に自覚があったのは、最後の一瞬だった」
 という。
 その場面場面で、危機を乗り越えるには理由があったようなのだが、乗り越えられた理由よりも、
「どうして、そんなに何度も危機が襲ってくるのか?」
 という方が、見ていた人には驚きだったようで、だから声を掛けたというのだが、
 声を掛けたことが、本来なら、
「よかった;
 と思えることなのだろうが、その時は、
「ここまで何度も危機が襲ってくることにだけ目がいってしまう」
 ということから、恐ろしさがこみあげてくるのだということであった。
 それが、虫の知らせなのかどうなのか、そんなことがあってから、この時のことを、
「虫の知らせ」
 ということで、見ていたのだったが、自分でも、後になって考えてみると、
「これが虫の知らせだったんだ」
 と思ったのだが、そんなことを最初から分かっていたわけではない。
 学校では、
「何かが起こる」
 ということは、別になかった。
 勉強もついていけないわけでもないし、成績も悪くなかった。
「一ランク下げた学校にしてよかった」
 と思ったのは、中学時代に同級生だった友達がいた。
 やつは、中学二年生まえは、自分よりも成績もよく、
「順調に勉強もでき、成績も、普通によく、まんべんなく、優秀グループの中に絶えずいた」
 という生徒だったが、順調にそのまま、レベル通りに、同じ高校に入学できたのだ。
 彼は、学校が示したレベルをそのままに、無難に合格し、この学校に通うようになった。
 つまりは、
「彼は、見事に自分の敷いたレールの上を、無難に渡ってきただけだ」
 と言えるだろう。
 成績も悪いわけではなく、無難な高校生活を続けていたと思ったが、夏休みを過ぎたあたりから、どうも成績が落ちていくようだった。
 二学期、三学期と、明らかに成績が落ちてきて、勉強にもついてこれなくなっていた。
「それまで、いかにうまく行っていたのか?」
 ということで、
「何かのきっかけ」
 があったのだろうが、そのことが影響し、それまで、キチンと進んでいたものが、音を立てて崩れていったのではないだろうか?
 ということであった。
 つまり、
「前提を覆すかのような何かがあった」
 ということであろうが、それが何だったのかということは、簡単に分かるものではないだろう。
 ハッキリ言えることは、
「夏休みに何かがあったのだろう」
 ということであるが、その何かを知る由もない。
 彼は、夏休みが終わって学校に出てきた時、明らかに今までとは違っていた。
「勉強に向き合える」
 というような感じではなかったようだ。
 ただ、ひとつ気になるのは、
「本当に夏休みに何かがあった」
 ということだけが、原因なのだろうか?
 と思っていたということだ。
 何といっても、中学時代から一緒にいて、中学三年生くらいになると、
「同じ学校を目指す仲間」
 いや、というよりも、
「ライバル」
 だった。
 だから、彼の性格というものも分かっているつもりで、
「学校にいる間の彼の様子はよくわかっている」
 とすら思っていた。
 その彼と、
「同じ学校に進むことになるだろう」
 という感覚は、ずっと感じていた。
 だから、入学式の時に、彼を見て、
「俺も同じような態度なんだろうな」
 と思うと、嬉しさがこみあげてきた。
 それだけ、彼が素朴に、この学校に入学したかったのかということが分かるようだ、
「この学校というものがよかったのか?」
 あるいは、
「このレベルの学校に入学できたことが、ひとまずの喜びとして出てきたのか?」
 ということであった。
 そんな彼が、夏休み以降、
「何かがあった」
 というのは分かったのだ。
 成績が一学期、悪かったわけではない。
 むしろ、
「無難な成績だった」
 と言ってもいいだろう。
 だが、よく考えてみれば、それがまずかったのかも知れない。
 ずっと、この道を無難に進んできた。
 まわりから見ていると、
「それが一番のことなんだ」
 と思えるのだったが、
 そもそも、その、
「無難」
 というのが、本人を苦しめるのかも知れない。
 特に、神経質な人は、無難な成績であることに、必要以上の不安を感じるのかも知れない。
 そんなことを考えていると、
「本当に自分は、このままでいいのだろうか?」
 ということを考えてしまう。
 しかし、
「少しでも動いて、自分で自分を狂わせてしまう」
 ということが怖く感じられるのだった。
 だから、夏休みの最中、ずっと一人で苦しんでいたのだろう、
「夏休みくらい、羽根を延ばせばいい」
 と思っている人もいるだろうが、順風満帆だったことに、自分が怖くなってしまい、次第に自分が今まで持っていた自信を持てなくなってしまったのだろうか?」
 と感じるようになったのだ。
 あくまでも、これは、信二の中の想像にすぎないのだが、どうも、ただの想像で済まされることではないようだ。
 最初は知らなかったが、彼がどうおかしくなってきたのは、その夏や進み中に、
「万引きをした」
 というウワサがあったからである、
 最初は、
「そんなバカな」
 と思い、
「まさか、そんなことが」
 と、ウワサの主を恨んだほどだった。
 しかし、
「火もないところに、煙もたたない」
 と言われるが、まさにその通りだった。
 学校側は必至に隠そうとするが、隠そうとすればするほど、表に出るものだ、
「やつがそんなことするはずがない」