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意識と記憶のボタンと少年

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 つまり、その時の状況に応じて考えている暇などないということだ。
 ということは、計画しておいたいくつかの中に、
「教授を失踪させる」
 ということがあったのかも知れない。
 教授を失踪させるということは、可能性としては、
「教授一人にすべての罪を擦り付ける」
 という考えが一番ではないだろうか。
 となると、そこから先は、可能性としてかなり狭まった気がするのは気のせいであろうか?
 そして一番可能性の高い考え方として、
「教授は、もうこの世にはいないのではないか?」
 という考えである。
 教授にすべての罪をなすりつけることで、自分たちは表にでないというものなのだが、もし、殺されたのだとすると、
「今後、教授の死体はどこかで発見されることになるのだろうか?」
 ということである。
 教授の死体が発見されるとすれば、まず普通に考えれば、自殺を装った形のものが一番可能性としては高いだろう。
 何しろ犯行は、いくら機密文書であるとはいえ、窃盗なのだ。人を殺して殺人犯になってまで、犯行を晦ませる必要があるというのか、それもわりに合わない気がする。
 そうなると、死体が発見されて、
「窃盗が、殺人事件に発展した」
 などというのは、あってはならない計画だ。
 だから、死体が発見されるのであれば、自殺を装わなければいけない。そうでなければ、わざわざ教授に罪をなす知つけるわけにもいかないだろう。
 だが、問題は、教授を動かすために、
「何を使ったのか?」
 ということである。
 これも
「誰か、教授の大切な人間を人質に使った」
 と考えるのが自然だろう。
 そうなると、その大切な人質は、
「教授を操る」
 という意味で、効果があったのだが、
「教授に罪を擦り付ける」
 ということになってしまうと、人質の意味はまったくなくなってしまうのだ。
 そうなった時の人質の立場としては、
「犯行を知っている唯一の部外者」
 ということになり、その人物を生かしてはおけなくなってしまう。
 それこそ、闇に葬ってしまわなければいけないだろう。
 死体が見つかっては困るのは、人質の方である。
 もっとも警察の方では、
「教授のまわりの人が一人行方不明になっている」
 ということは、すぐに分かるだろうから、そこからまた捜査が始まらないとも限らない。
 だが、この人が女性であり、例えば愛人だとして、愛人の存在を知っている人が一部の人間だとすれば、その人間を脅迫か、買収すればいいだけのことだった。
 事件に関して、いろいろ考えている刑事の頭の中を少し探ってみるとこういうことになった。
「事件というのは、小説よりも奇なりなんdろうな」
 と思っていたが、それも今までの刑事としての勘というべきであろうか。

               殺人事件

 同じF警察署管内で、実はF大学において、機密書類盗難事件が発生したのとほぼ同時くらいに、殺人事件が起こっていた。
 その現場というのが、F大学の近くで、F大学生が半分くらい入居しているマンションだった。
 部屋の間取りとしては、、ワンルームマンションで、一般的な大学生が一人暮らしをするにはちょうどいい広さで、家賃だったのだ。
 被害者も、F大学に通う大学生で、法学部の二年生だった。その人は女性で、このマンションを借りているF大生の半分以上は、女子大生だったのだ。
 さすがに大学生が借りる部屋ということで、一番マンションの管理会社として気を遣ったのが、防音についてであった。
 大学生というと、どうしても、中には友達をたくさん呼んで、騒いだりする人もいるだろう。だが、そんな人たちばかりではない。真面目に勉強するために、部屋に籠っている人だっているのだ。
 だから、防音がしっかりしていないと、他の部屋から文句が出てくるのは当たり前のことで、
「勉強ができない」
 であったり、
「眠れない」
 などというクレームがつけば、マンションの信用問題ともなり、退居者が増えてしまうと、今度は時期が中途半端だとすると、社会人中心であれば、秋の転勤時期ということも考えられるが、大学生が基本であれば、次の春まで入る人はいないことになる。
 そうなると、せっかくの入ってくるはずのマンション収入が入ってこなくなるのも困るからだ。
 しかも、出ていった人の口から、
「あのマンションはやめておけ」
 などという話が伝われば、尾ひれをつけて、誹謗中傷が渦巻いてしまうかも知れない。
 そうなれば、マンション収入だけの問題ではなく、マンション経営にまで関わってくる。
 まさかと思うが、退居者たちが、連名で訴訟でも起こしたりすれば、計画は丸つぶれであり、何をどうすればいいのか、そこからがスタートラインということになってしまう。
 そんなマンションでも、社会人の人もいた。ワンルームなので、家族で住んでいる人はおらず。皆一人暮らしだった。
 社会人においては、女性はほとんどおらず、社会人入居者が十人いたとすれば、女性は一人か、多くても三人までというのが、今までから続いてきたことであった。
「女性の社会人であれば、ワンルームよりも、狭くても、部屋がいくつかある方を選ぶのではないか?」
 というのが、管理人の話であった。
「社会人というのは、お金がありますからね。どうせなら、オートロックのマンションを探すんじゃないでしょうかね」
 という話も聞いたことがあった。
 このマンションには、今ほとんどの部屋が埋まっている。そもそも、人気があるところなので、春の新入生シーズンには、
「今は、満杯です」
 と言って断った人も少なくはなかった。
 それは今年に限ったことではなく、、過去にも結構あったことで、
「あのマンションは人気があるのでね」
 と、住宅あっせんの会社の人は、もし空いていれば、
「ここなんかどうです? いつも人気ですぐに埋まっちゃうんですよ。今ならちょうど空いているので、いかがです?」
 と言って、薦めてくれることが多い。
 この時の被害者の女性も、部屋を探しに来た時、そう言われて、
「そうなんだ。せっかくだから、見せていただこうかしら?」
 と言って、部屋を見に行った。
 築十年も経っていないので、それほど中古という感覚もないし、サニタリーや水回りもしっかりしていて、綺麗だったこともあって、気に入ってしまった。
 家賃に関しても、文句のつけようがない金額だったので、他もいくつか回ってみたが、やはりここ以上のところはないということで、その日のうちに契約を済ませたのだった。
 他の住人もほとんど同じで、
「数件見てみたけど、これ以上のところはなかった」
 ということで、すぐにこのマンションに決める人が多いのだった。
「このマンションにしてよかったわ」
 と感じたのは、やはり防音が行き届いていることからであろうが。
 この人が、このマンションに決めた理由の一番は、
「大学に近いこと」
 と、もう一つは、
「防音が完璧なところ」
 だと言ってもよかっただろう。
 彼女は大人しい性格で、友達もそんなにいるわけではない。だから、このマンションに親友を連れてくることがあっても、ほとんど、静かだった。