小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

伏線相違の連鎖

INDEX|21ページ/27ページ|

次のページ前のページ
 

 長谷川巡査が、小山田となかなか連絡が取れないと思っていたその時、小山田は自分のことを考えるようになり、それまで漠然と感じていた自分とは違う一面を知ることになったのだ。
 そのせいで長谷川巡査との間に壁のようなものができて、今回の事件でも、友達だということを他の人に話す勇気が持てなかったのだ。
 そんな小山田が、どうしてまわりの人間に従うようになったのかというと、元々小山田という男は。子供の頃からまわりに従順だったわけではない。
 このような性格の人間は得てして生まれつきの性格を引きずっているようなものだが、小山田の場合は違った。
「俺、子供の頃はこれでも、ガキ大将気質だったんだぜ」
 と言って、長谷川巡査に言っていたが、長谷川巡査は最初その言葉が信じられなかった。
 小山田という男が、従順な性格で、下手をすれば、いじめられっ子だったり、奴隷扱いされていてもおなしくないような性格ではないかと思っていたくらいだった。
 今の時代、
「ガキ大将」
 という言葉が死語になっているが、これも死後というべきか。
「わんぱくな少年」
 と言ってもいいくらいだっただろう。
 そんな小山田が狙われたとなると、そこにどういう真実が隠れているのか分からない。現場には、誰かがいたという形跡は残っておらず、植木鉢を落とすだけの目的でそこにいたのだろう。そうなると、一つ疑問が浮かび上がってくる。
「犯人は一体どうして、小山田がここを通りかかるというのを、前もって知っていたのであろう?」
 という疑問だった。
 その疑問に一つの仮説を立ててみた。そのことを柏木刑事に話してみたが、
「少し話が飛躍しすぎているんじゃないかな?」
 と口では言っていたが、その可能性を柏木刑事も考えているようだった。
 話した内容としては、
「今回の事件なんですが、少し気になるところがありまして」
 と切り出すと、
「ほう、長谷川君が自ら推理してくれるというのもいいかも知れないね。参考のために聞かせてもらおう」
 と言って、少し茶化しているかのようだったが、話を訊いているうちに、少しずつ真剣な顔になっていったのが印象的だった。
「まず感じたことはですね、このあたりというのは人通りが少ないこと、そして、植木鉢というものが、そのあたりに存在しないこと、それらのことを考えると、どうも作為が見え隠れしているような気がするんですよ」
 と、いうと、
「それじゃあ、これは何か狂言の匂いがするとでも言いたいのかい?」
「そうですね。私にはそう思えて仕方がないんですが、柏木刑事はどう思います?」
 と聞くと、
「君は、小山田という男を信用していないのかな?」
 と言われた長谷川巡査は、
「そういうわけではないんです。彼のことは私は以前から知っていて、よく話をすることもあったのですが、あまりあざといようなことをするタイプではありません。人に対して従順で優しいタイプなので、それだけに、この道において、上から植木鉢が落ちてくるなどという考えにくいことが起こるというのが腑に落ちないんです。まるで、この犯行に何かの疑惑を持たせるような感じがしてですね」
 というと、
「やはり君はこれを自作自演だと言いたいのかね?」
 と言われた長谷川は、
「ハッキリとは言えませんが、そう考える方が自然な気がするんですよ。特に彼は、数日前の自分の関係者でもありますからね」
 と、元々友達だった相手をよくもここまで言えるものだと、自分でもビックリしている長谷川巡査は、
「やはり、俺も警察官なんだな」
 と感じていた。
「彼はそんなに真面目な性格なのかい?」
 と言われた長谷川巡査は、
「ええ、そうですね。そしてもう一つは、人を疑うことをしないともいえますね。だから下手をすると、他人から利用されやすいということも言えます。逆に融通の利かないところがあり、典型的な真面目人間というのが彼に対して素直に感じた性格だと言えると思います」
 と長谷川巡査がいうと、
「なるほど、そのあたりの矛盾から、何かの作為を感じたということかな?」
 という柏木刑事に対して、
「ええ、そういうことになりますね」
 と、長谷川巡査は答えた。
「じゃあ、何のために、そんな手の込んだことをしたというのかい?」
 と言われ、
「そこまでは分かりませんが、陽動作戦というか、何かから目を逸らそうとしてわざとやったのではないかということもありえるんじゃないかと思ってですね」
 というと、
「一番考えられるのは、この間の松本さんへの殺人未遂だろうと思うけど、こちらは、別にまだ彼を真犯人だと断定したわけでもない。そもそも、まだ被害者の供述スラ取れていないところだからね、そんなところで犯人ではないというアピールをしても意味がないような気がするんだけどね。事件をややこしくするだけのパフォーマンスにしか過ぎない」
 と柏木刑事は言った。
「そうなんですよね。それくらいのことは彼にだって分かりそうなものなのに、何か他に目的があるのかな?」
 と長谷川巡査がいうと、
「とにかく、こちらは地道に捜査をする必要があるということだね。この事故はこの間の事件とはまったく関係のないのかも知れない。気を付けて見ている方がいいかも知れないな」
 と、柏木刑事は言った。
 小山田の供述には、疑えばいくらでも埃が出てきそうであるが、敢えてそのことに触れるのはよそうと、柏木刑事は考えた。
 それは知り合いである長谷川巡査の話があったからで、
「小山田という男は真面目なんですが、意固地なところがあるので、相手に詰められると、反発しようとするんですよね。しかも相手が警察となると、余計な力が入るんだって、前に言っていましたよ」
 と長谷川巡査は言った。
「何か警察に対して逆らいたい気持ちでもあるのかね?」
 と聞くと、
「そのあたりはハッキリとしないんですが、何か警察には過去に嫌な想い出があるそうなんです。でも私のような制服警官に対して持っているわけではないと言っていたので、刑事という人たちに何かあるんでしょうね?」
 と言われた柏木刑事は、
「以前、取り調べか何かを受けて、嫌な想いでもしたのだろうか?」
 というと、
「そうかも知れません。最初にストーカに追われているようなことを言っていた女の子を交番に連れてきた時も、自分は警察署には行きたくないのでといって、うちの交番に来てくれたんです。本当なら生活安全課に行ってみるのもいいですよと私が言った時、彼が訝しい表情をしたのを思い出しました。何かやはり警察に嫌な思いがあるんでしょうね」
 というと、
「そのストーカーの女の子に対してはどうだったんだい?」
 と言われた長谷川巡査は、
「最初は、断固として悪に立ち向かわないといけないと言っていたんですが、彼女が泣きだしたのを見て、かなりトーンダウンしたみたいですね。それ以降、彼女の嫌がることはまったく言わなくなりましたからね。彼は勧善懲悪の塊りかと思ったけど、ちゃんと空気も読める人間なんだって思いました」
 と長谷川巡査がいうと、
「どうやら刑事に向いていそうな男だね」
 という柏木刑事に対して、
作品名:伏線相違の連鎖 作家名:森本晃次