小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

メデゥーサの血

INDEX|9ページ/29ページ|

次のページ前のページ
 

 逆に彼らは、
「この状態で警察に連続凶悪犯だということを看破されるようなら、その時点で自分たちの負けだ」
 というくらいに思っていたに違いない。
 警察というところの管轄意識は、反社会勢力の「縄張り」と同じだ、下手をすると、もっと感情的かも知れない。
 それは、警察にとって、
「百害あって、一利なし」
 であろう。
 そう考えると、
「本当に警察って間抜けだよな」
 と言われても仕方ないかも知れない。
 そのおかげで、管轄冴え跨げば、少々のことをしても見つかることはない。これこそ警察権力の盲点と言えるのではないだろうか。
 その割に、マスコミはちゃんと真相を見抜いている。
「凶悪テロ組織による、連続残虐犯罪」
 という見出しが表紙を覆っている。
 マスコミのように大げさで信憑性はないかも知れないが、それくらいの発想を持った人がいなければ、しょせん警察には何もできない。確かにマスコミは、何ら確たる証拠があって見出しを書いているわけではない。要するに獄舎が興味を持って、雑誌を買ってくれればいいのだ。
 そのため、中に書かれている内容は、かなり奇抜であるが、彼らから見れば、かなり的外れである。
「我々の緻密に考えられた作戦をまったく踏襲していない」
 と、嘲笑っている。
 もっともマスコミというのは雑誌が売れればいいのだ。遠慮なしに読者が震えおののくような記事を書いて、それが世間で評判になれば、自分のところの雑誌がこれからも売れるだろうという安直な考えでしかなければ、組織の考えていることなど、分かるはずもない。
 しかも当時というと、彼らが起こさなくても、何が起こってもおかしくない時代として、定評があった。それだけに、余計にそんな凶悪な団体が暗躍しているなど、思いもつかないだろう。
 それこそ、
「そんな秘密結社などの存在は、探偵小説でもなければありえない」
 という頭の固い幹部ばかりだった。
 幹部という意味でいけば、この秘密結社の方が、よほど頭がよく、時代を掌握しているのかも知れない。
 殺人事件では、いつも目撃者がいない場合が多かった。薄暗がりの場所で発見され、必ず殺害現場と死体発見現場が違っているというのが特徴だった。最初の頃はすべてがまったく別の殺人のように思われていたが、ある日のN社の週刊誌に、
「犯行声明」
 と書かれて、その記事が載った。
 そこには、
「今から一か月くらい前くらいから各地で起こった殺人事件、あれは我々の団体が起こした事件である。その証拠に、その殺人に目撃者が皆無であること、そして発見場所が薄暗がりであり、そのすべてが犯行現場と死体発見場所が異なっていること。それらは警察の捜査でしか公表されていない。それを我々が知っているというのは、どういうことであろう? 犯人が我々だということを示してはいないだろうか。この事件は今回がもちろん終わりではない。実際に我々もいつまで続くのか分からない。ただ、警察関係諸君の情けない捜査では、我々に辿り着くことさえできないだろう。無能な警察が入り口で右往左往している間に我々は中で犯行を実行し、そして、素知らぬ顔で君たちに嘲笑を浴びせながら堂々と去っていくのだ。これほど面白いことがあるだろうか。これは一種の我々の犯行声明だと思ってくれてもいい。だが我々がどこの誰かは君たちが見つけてくれたまえ。まずはそこからがスタートラインだ。こちらは君たちがやってくるのを楽しみに待っていることにしよう。それでは、またその時に」
 と、四角に囲って書かれていた。
 そして、最後には彼らが今まで起こした犯行を、場所と日時、これは死体発見現場とその発見時間であるが、記されていた。
 この犯行声明を記した雑誌担当者もさすがのことに、いつもの大げさに書き立てる勢いはない。犯人に睨まれるかも知れないし、不謹慎だと、世間からバッシングを受けることが分かっているからだった。
 これを見た警察が大いに憤慨したことは明らかなことだった。
「何というやつらだ。何が犯行声明だ。やつらは愉快犯なんだろうか?」
 という言葉に対し、
「そんなことはないだろう。最初にいくつかの事件をいろいろなところで起こしておいて、あとになって背k名を出すのは、愉快犯とはやり口が違う。むしろ、それよりも、我々警察に対しての挑戦ではないのだろうか。『俺は今までお前たちの想像もつかない犯罪を、堂々とここまでやってのけたんだ。無能な警察なんかに捕まるはずなどない』ということを言わんとしているんだ」
 という捜査主任の話を受けて、最初に口にした刑事は、頭を冷やして、落ち着いたようだった。
「それじゃあ、まずはこの雑誌社が何を根拠にこの記事を書いたのかを聞き出すのが先決ですね」
 というと、
「そうだな、そしてここに書かれている事件を再度洗い出して、それぞれの所轄と協議して、合同捜査ができるかどうか、話してみる必要がある」
 それを聞いて、刑事は思った。
――本当に警察組織というのは、面倒くさいものだ。管轄なんていう縄張り意識があるから、捜査がやりにくくてしょうがない――
 今までに何度、この管轄の壁にぶち当たってきたか、それを思い出すとウンザリしてきたが、今はそんなことを言ってはいられない。この刑事は、熱血漢で有名で、少し先走りしてしまうところがたまに傷だったが、それでも正義感は誰にも負けることはないだろう。こういう部下が一人くらいいてくれる方がいいと、捜査主任は思っていた。
 刑事はさっそく、出版社を訪れた。ちょうどその時、雑誌を編集した担当記者がいたので、話を聞くことができた。
「あなたは、どうしてあのニュースソースを手に入れたんですか?」
 と、単刀直入に聞いた。
 そこには雑誌記者独特のルートがあって、そこから苦労して手に入れたのだと思っていたが、
「ああ、あれですか。あれはですね。僕宛に送られてきた内容を記事にしただけなんです。ただ内容が内容だったので、編集長に相談しました。警察に通報した方がいいのでしょうかってね。すると、編集長は、いや、このまま書けと言ったんです。編集長とすれば、犯行声明だったら、うちに奥ってきたということは他の雑誌社にも同じことが送られているはずなので、ここで書かないと出遅れてしまうというんです。でも、僕が気になったのは、なぜ僕だったのかということなんですよ。僕は別にそんなに過激なことを書くわけではなく、ただ、事実のみを書くという記者としては面白みのない男なんですがね」
 というと、刑事の方も、
「だからなのかも知れませんね。相手とすれば感情をこめずに書いてほしかった。彼らの文章自体、十分挑戦的ですからね。そこに記者の私見が入ってしまうと、せっかくの犯行声明が薄くなってしまいますからね」
 と同意するような意見を言った。
 その話をしながら、刑事は記者の意見としてこの事件をどう思うかと聞いてみると、
作品名:メデゥーサの血 作家名:森本晃次