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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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孤独たちの水底 探偵奇談12

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鈴と太鼓と笛の音。舞台の巫女さんたちの優雅な舞を、郁はとうっとり見つめている。面を額に押し上げ、郁は隣の美波に同意を求めた。

「きれーだねえ。巫女さんとかってちょっと憧れるよね」
「郁、やきそばおいしいよ。リンゴ飴も買ってきていい?」
「ちょっとちゃんと見なよ、食べてばっかじゃん!」
「部活終わりで腹ペコなんだもん」

参拝客らは美波同様、露店の綿菓子やリンゴ飴、やきそばなんかを片手に祭りを楽しんでいる。ざわざわと賑やかな喧騒のどこかに神様もいるのかもしれない。そんなことを思っていると、美波がお面をずりあげて尋ねてきた。

「そういえば須丸誘わなかったの?」
「…うん」

それを聞いて美波が口を尖らせる。消極的な郁の態度を非難しないものの、心のどこかでは歯がゆく思っているのだ。

「じゃー探そうよ、どこかにいるかもしれないじゃん」
「え、いいよ!」

もしも、誰か女の子といたら?そんなの直視できない!それでもいいのだと納得しているつもりでも、瑞が女の子と一緒に祭りを楽しんでいる場面など、絶対に遭遇したくない。

「もうコクっちゃえばいいじゃん!あたしそういうのモヤモヤしてやだ!探そう須丸!」
「だめ!無理だよ!」

告白なんてしない。できない。したら終わってしまう。ずるくていい、弱虫でいい。大切だから、絶対に失いたくない。
この頃思うのだ。彼が笑うときに目じりにできる皺を見て、この笑顔を見せてもらえなくなることが一番怖いと。自分の思いを告げたら、瑞はどう思うだろう。どんな顔をするのだろう。戸惑った表情?驚いた表情?悲しそうな表情?いつもみたいに笑ってもらえなくなるのなら、告白など絶対にしたくない。

「…あたしは郁の気持ちを大事にしたいって言ったけどさ…でもやっぱ辛そうだから」

美波が少し申し訳なさそうに言う。彼女の友情に感謝するとともに、以前瑞本人からも同じことを言われたことを、郁が思い出した。
そんな辛い顔をさせる男が相手なら、好きでいることをやめられないのか、と。

「…ごめんね」
「謝ることじゃないけど…。あたしこそごめん。急かしすぎた」
「ううん。ありがと美波」

やきもきさせて申し訳ない。それでも郁の気持ちを汲み取って見守ってくれることが嬉しかった。

「…こんなこと言ったら美波笑うと思うんだけど、あたしにとって須丸くんて冗談じゃなくて、割と本気で王子様なんだよ。現実では絶対に手が届かない存在っていうのかな…」

あのひとと心を通わせて、同じ未来を歩いていく。そんな事態が全く想像できない。