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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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孤独たちの水底 探偵奇談12

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部員達がものすごいスムーズさで祭りへ行ってしまった。伊吹はそれを微笑ましく思いながら部誌を記入する。虫の声に混ざって、笛や太鼓、人々のざわめきが聞こえてくる。祭りの夜というのは、浮世離れした雰囲気があるものだ。それはどこか懐かしく、なんだか特別な感じがして嬉しくなる。

記入を終えて戸締りに行こうとすると、器具庫に瑞がいた。まだ残っていたのか。

「どうした?」
「あ、先輩。巻き藁矢が結構ぼろぼろで」

備品の矢の筈が傷んでいるという。彼は接着剤を片手に丁寧に直しているところだった。道具の手入れはその都度行っているが、一番最初に気づくのはたいてい瑞だった。自分の持ち物だけでなく、備品も含め、弓具を丁寧に扱う瑞らしかった。

「おまえは祭り行かないのか?お誘いたくさんあっただろうに」

瑞と祭りを楽しみたいという女子はたくさんいるのだ。部活が始まる前、弓道場の前にも何人かが約束を取り付けようと待っているのを見た。

「…怖いもん俺、沓薙山」

矢を戻し、瑞は少し拗ねたように言うのだった。
こいつは神様達から監視されている、らしい。特殊な魂の持ち主であり、いつかの時代、もしくは別の自分だったころ、何かやらかしているというのだが。祭りの夜は、神様とすれ違うとも言われている。相性の悪いらしい瑞からしたら、恐怖なのだろう。

「先輩は、お祭り行かないんですか」
「俺は参道登る元気がない」

正直部活でクタクタだ。おじさんだ、と瑞が笑うのが悔しい。

「じゃあ飯行きませんか」
「お、いいな!」