孤独たちの水底 探偵奇談12
苦しいけれど、せつないけれど…今の関係を終わらせるよりは、逃げ続ける道を選んでしまう。
「うっわあ、キレー…」
弓道場を出て裏山を見上げる。
参道を彩る灯。紅葉を照らす幻想的な光景に、郁は魅入る。山全体がぼんやりとした灯りに包まれている様子は、まるでおとぎ話の世界のように非現実的である。
「境内まで行けば、屋台もあるって」
「お腹減ったねー!食べるぞー!」
郁らは用意したお面をそれぞれ被り、参道を目指す。神様とすれ違う、そんな不可思議な話に、郁の心は踊るのだった。
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作品名:孤独たちの水底 探偵奇談12 作家名:ひなた眞白