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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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孤独たちの水底 探偵奇談12

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審判



どれくらい時間が経っただろう。颯馬は腕時計の文字盤を見る。一時間ほど経っただろうか。郁と二人の教室で、ただ二人の帰りを待つ。郁は組んだ手をそのままに、じっと動かない。一心に、二人の無事を祈っているように思えた。

(…まじでそろそろ帰ってきてほしいんだけど)

飲み物でも買ってこようかと思ったその瞬間。

「…!」

颯馬は、何か音が聞こえたような気がして立ち上がった。

「颯馬くん?」

それは空気を震わせるような微かな旋律だった。しかしこれまでただ沈黙だけが支配していた空間の中で、それは顕著な変化だった。
そして颯馬は、窓の外にそれを見る。

「…神様が戻ってきた」
「え?」

颯馬の視線の先を追い、郁もあっと声をあげる。沓薙山が、淡く光っている。それは参道の灯ではなく、ぽっぽっと飛び交うような淡い桃色の光が至る所で明滅しているのだった。

「蛍…じゃない…。でもきれい、なんだろう…」

郁が見惚れるような声で言う。灯りは至る所で浮遊し、何かの目印のように消え、また静かに浮かびあがってくる。

「神様が山に戻ったんだ!行こう郁ちゃん!」
「え?じゃ、じゃあ先輩たちも?」
「たぶん」

二人して教室を飛び出す。



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