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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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孤独たちの水底 探偵奇談12

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「集合」

弓道部主将の神末伊吹(こうずえいぶき)の声が響き、郁(いく)らは稽古の手を止めて集合した。肌寒さを感じる11月の弓道場。午後五時を過ぎ、外はすでに夜のとばりが下りている。

「今日の稽古は早上がりだ。沓薙山の本祭だからな」

そう、祭りだ。郁はそれを思い出し、心が躍る。山のふもとにあるこの学校は、沓薙山との縁が深い。祭りの本祭の夜は部活も補講も早くに終了するという嬉しい習わしがあるのだった。下校時間も伸ばされる。生徒たちにとっては嬉しいご褒美のようなものだった。

「注意は聞いているだろうが、スリやらケンカに気を付けるように。参道の灯が落ちる時刻にはきちんと帰宅すること。はめ外しすぎるなよ」
「ハーイ!」
「あ、面も忘れるなよー」
「ハーイ!」

元気に挨拶をすませ、部員達はうきうきと裏山へと散っていく。郁も早々に着替えると、待ち合わせをしている美波らと合流するべく準備を急いだ。

(須丸くんは、誰と行くのかな…)

弓道場を出る前に、郁は射場にいる須丸瑞(すまるみず)のほうをちらりと見た。祭りの夜は、カップルもおおぜい見かける。瑞は誰かと約束をしているのだろうか。気になる。

瑞はといえば、まだ胴着姿で、伊吹と何やら話をしている。来週に控えている県外遠征についての打ち合わせらしい。その真剣な横顔を見て、誘ってみればよかったかなと後悔する。

「郁、早くいこ!」
「あ、うん」

友だちに肩をたたかれ、郁は後ろ髪を引かれる思いで弓道場を後にする。いまの一番近くにいられる友人関係を壊したくない臆病な郁は、恋ごころを隠すことに決めたのだ。だから、隣を一緒に歩きたいと思う資格も、ない。