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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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孤独たちの水底 探偵奇談12

INDEX|22ページ/45ページ|

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月明かりに青い森を行く。あてがあるわけではないのだが、足を進めていないと伊吹は落ち着かない。

(…こいつは何なんだろう)

後ろからついてくる作務衣の男は、何も言わず音もたてずに歩いている。この森のどこかに瑞がいるのだとして、ともに学校へ戻ることができるのだろうか。先ほどそんな疑問をぶつけてみたのだが、彼は何も答えてはくれなかった。

「何かある…鏡?」

それは夜空を移した鏡面のような池だった。美しい月と空を映し出した水面は、波一つ立っていない。ひんやりとした温度を感じさせる夜空を映すその深い青。生き物の気配はない。命を感じさせない水面は、現実離れした唐突さで伊吹をいざなう。

「すごい…」

覗き込む。そこには伊吹の顔が映り込んでいる。
はずだった。

「…?」

違和感。何か、おかしい。映り込んでいる自分の顔が、姿が、まるで自分ではないような違和感。目をこらす。こちら側の伊吹をじっと見つめているその人物。

「!」

それに気づき、伊吹は水面からとっさに離れる。これは鏡ではない。水面のその向こう側は、水底ではない。どこか別の空間…。

「向こう側だ」

作務衣の男がそばに来て、言う。
向こう側?

「ご覧。きみの半身がいる」

促され、伊吹はもう一度水面に近づく、おそるおそる覗き込むと、そこにもう月夜は映っていなかった。水面に映るのは、眩しい日差しと、木々の影。そして、瑞だった。制服姿で、先ほど別れたときのまんまの彼がいる。