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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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孤独たちの水底 探偵奇談12

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それさえ、神様達は身勝手というのだ。自分はよほど、罪深いらしい。伊吹と二人で『なかったことにした』という世界で、瑞はどのような存在だったのだろう。

「…貸せ、」
「お狐さん…」

少女はそっと瑞の手からハンカチをとると、手のひらに巻き付けて止血してくれた。

「我にできることはさほどないだろうが、伊吹のもとに帰れるよう力を貸そう」
「…ありがとう、でもいいの?」

沓薙の一柱である狐だって、瑞の行いが許されないことと理解しているはずだ。

「…我にも失いたくないひとがいるからな。気持ちはようわかる」

ああ、そうだ。この狐もかつて、大切な場所を、ひとを奪われそうになっていたのだっけ。

「さあ行くぞ。急いだ方がいいやもしれぬ」
「うん」
「封じは破られた。扉はないがおぬしなら蹴破れるであろ」
「そーゆうのめっちゃ得意」

渾身の力を込めて、伊吹は靴の底で壁を蹴る。木目にミシミシと傷が走り、外の景色が現れる。通り抜けられるくらいまで破壊して這い出る。眩しい夏の空が広がっていた。セミの鳴き声、木々の隙間から落ちる木漏れ日。

「…ここはどこだ」

今まで自分がいた半壊した建物を振り返ると、そこは神社の本殿のようだった。前方には鳥居があり、下へと降りる石段が続いている。

「さっきまで夜だったよね?」
「われにも干渉できぬ世界だ。何があるかわからんから、心せよ。伊吹のもとに戻りたいのなら、行くしかなかろう」
「当然でしょ」

ここがどこで、この先がどこに続いているかなどどうでもいい。瑞が戻るべき場所は、ただ一つ。



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