孤独たちの水底 探偵奇談12
「祭りの夜は面を被り、神様達も人間も祭りを楽しむ。だから毎年、本祭の夜には神様がいらした、って人間側からも自覚できる現象がいろいろ起きるんだ」
封をしたお供え物が食べられていたり、提灯が奇妙な点滅を繰り返したり。昨年は、紅葉していない木々が一気に色づいて参拝客を楽しませたという。
「今年はそれが一切ない。神様が、山にいないんだ」
そんなことは、これまでなかったのだという。颯馬の祖父がそれを不審がり、何か心当たりはないかと颯馬に尋ねたという。颯馬は、一つだけあると言った。それが瑞なのだという。
「…神様達が、須丸くんのところへ行ったっていうの?」
「わかんないけど、たぶんそうだと思う。あの子は四柱様たちにとっては特別な子どもで、いつも監視されてる」
郁は理解できずに戸惑う。しかし颯馬は焦っているようだ。
「校舎かもしれない、行ってみよう」
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作品名:孤独たちの水底 探偵奇談12 作家名:ひなた眞白