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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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孤独たちの水底 探偵奇談12

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神隠し



昇降口で瑞を待つ。しかし、彼が現れない。弓道場を出てもうずいぶん経つ。忘れ物を取りにいっただけならば、これほど時間がかかるだろうか。何の連絡もない。苛立ちよりも心配が勝った。なにせこの学校は、夜になるといろいろと怖いことが起きるのだ。

(教室に行ってみようか…)

伊吹は靴を履き替え、夜の校舎に踏み入った。瑞のクラスを目指し、静かに階段を登る。濃い藍色の闇に、自分の足音が響く。瑞がいるような気配がない。不安になってきた。伊吹は廊下で立ち止まると、電話をかけてみようと思い立つ。そのときだった。


「――先輩、」
「わっ!!」

囁きと一緒に、右肩に鈍い痛みが走った。背後から、ぐっと肩を掴まれている。瑞の声だ。

「須丸だろ?びっくりさせるなよ…」

振り返った伊吹は、そこに立つ影を見て眉をひそめた。瑞だ。暗がりにシルエットしか見えないけれど、声は間違いなく瑞だ。執拗なまでに力をこめ、伊吹の右肩を掴んでいる、漆黒の影。

「…来て」
「は…?つうか、痛い…」
「…早く来て」

闇夜に、瑞の表情は見えない。冷たい空気を震わせるように、機械じみた冷たい声が届く。どうも様子がおかしい。食い込むほどに強く、その手が伊吹の右肩を掴んでいる。

「…探しに来て」
「須丸?どうしたんだよ…」

尋常でない雰囲気に、伊吹は全身を緊張させた。