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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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隠子の婚約+美人の退職+愛娘の受験+仕事の責任=幸せの1/2

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「丸川係長、まだ文句言ってるんですか?」
 今日もミーティングと称し、博之と小原の愚痴会が始まっている。時間は18時頃だが、もう日も短くなり、電灯の点いていない食堂は薄暗かった。
「文句じゃないよ。やれるって自信がないから、逃げてるだけだよ」
「木田さんなら出来ますか?」
「俺だったら出来るとか思わないよ。うまく行かないなら、方法を変えて乗り切るだけ。誰がやっても同じだよ」
「そこまで本気出すかどうかですよね」
「小原はどうなの、業務の引継ぎ」
「なんか皆から避けられてるみたいで、作業の完了報告もろくにないんです」
「大体皆、そんなもんだよ」
「私嫌われてるんです」
「上に立つ者の宿命みたいなもんかな。お前だって、命令ばっかりする俺のこと嫌いだろ?」
「それは・・・仕事ですから」
「皆、忙しい時ほど逃げたがるもんで、暇な時ほど頑張ったふりするもんだよな」
「仕事だろ!って言いたくなります」
「意識の低い人が育つには、指導し続けるしかないんだ。地位を与えても、責任のある業務を任せても、頑張るわけじゃない」
「失敗して給料下げられるの嫌だと、思ってるからですよね」
「そんなこと思うの? 実際は基本給って、そう簡単には下げられないんだよ」
「そうなんですか?」
「うまく仕事すれば、評価が上がって査定が上がる。でも、失敗しても評価は下がるけど、給料は減らせない。それは逃げて誤魔化してる人でも同じ。結局はうまく出来たとこしか、給与査定には結びつかないんだよ」
「そうなんですか。てっきり、失敗したら責任取らされると思ってました」
「うちの会社で基本給が減った人なんかいる?」
「手取りが減った人って、いましたよね」
「それは担当業務が変われば、その業務に必要だった手当てはなくなるよ。でも基本給は頑張った人は上げてるけど、途中で頑張らなくなっても、一度上げたものは元に戻せない」
「皆『そこまでするほど給料もらってない』とか言う割には、上がるように頑張る人って、なかなかいないですよね」
「思い切ってやればいいのに、いつも一般社員にはチャンスしかないんだから。でも、俺みたいな管理職は別だよ。今年の成績が、思いっきり来年の年俸に響くから」
「それって気が休まらないですね」
「俺の給料が上がる時は、皆の給料とボーナスが上がった時なんだけどな」
「それなのに皆、非協力的なんて、木田さん大変ですね」
「解る?」
 博之は、暗い部屋の非常口サインの明かりが、小原の横顔を照らしているのを見ていると、より可愛く見えて、気分が癒されて行くのを感じていた。
「あ! もうこんな時間だ。今日は早く帰りたいんだ」
「すみません。私の愚痴に付き合わせてばっかりで」
「そんなことないよ。小原と話してると楽しいから」
大急ぎで事務所に戻り、誰もいないその部屋の後片付けをする博之と小原だった。