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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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隠子の婚約+美人の退職+愛娘の受験+仕事の責任=幸せの1/2

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第5章 悩み深まる秋



 10月も半ばを過ぎ、朝晩冷え込むことも多くなって、風邪を引く社員が目立ち始めた。
(この繁忙期に、易々と休まれたら堪ったもんじゃない)朝、リビングに下りて来た博之は、出勤前の身支度をしながら、こう考えていた。

「あなた、もう上着、ダウンとか要る?」
「ダウンはまだ早いよ。俺は事務所にいることがほとんどだから」
「じゃ、秋コートとロンティー(長袖Tシャツ)出しときますよ」
「ありがと」
「今日も帰り遅くなるの?」
「ああ、10時頃かな」
「秋日子の勉強を見てやって欲しいんだけど、無理ね」
「秋日子、何かあったの?」
「中学受験模試でテストはA判定なんだけど、作文が苦手みたいで悩んでるのよ」
「あいつ口下手だからな。論理的な説明が下手だろう」
「あなた、論文とかも書くでしょ。少し相談に乗ってやって欲しいの」
「ああ、分かった。出来るだけ早く帰れるように、がんばってみる」
とは言ったものの、自信のない返事だった。

 博之は、出勤のため家を出て、車の運転をしながら、ぼんやりと考え事をしていた。
(秋日子は本当に、中学受験大丈夫なんだろうか。勉強には俺も口うるさく言ってるけど、実際に横に付いて見てやることは、ほとんどないな。仕事に関しては、しっかり目を光らせておく癖がついてるのに、家のことは案外放置してしまってるのかも知れないな。家だけじゃない、愛音のことだって心配なのに、こちらから何もしてやれていない。どっちも父親失格だな)
 いつもの川沿いの土手の狭い道路で、車窓から見える桜の葉が黄色く変化しているのに気付いた。
(愛音と初めて会った時と同じ季節になったのか。あれからひとみ先生が亡くなって、お互い遠慮しながら生きて来たけど、愛音とはこれ以上は、近寄るようなこともないのかな)
 博之の車は、赤信号で停まった。博之は横の川を眺めている。川の水が多いのは、週末に来た台風の影響だ。
(台風で少し遅れ気味だけど、新映像チームも何とか動きだしたのに、丸ちゃん(丸川係長)は今だに頼りないし。今から増員したら、またトレーニングで手間がかかって、コストも嵩む。利益はまだ出ないかもしれないな。こんなことを悩んでるのは俺だけで、誰も売り上げなんか意識してないだろうし。小原ならその辺は分かってるだろうか。あいつが退職するのは本当に残念だ。あと2ヶ月程しかない)
 いつもの慣れた出勤ルート。踏み切りで一時停止をするのを忘れて、うっかり素通りしてしまった。幸い遮断機が下りるようなことはなかったが、
(危ない危ない、ぼんやりしてたな。気を付けよう)