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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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聞く子の(むかしの)約束

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 後日また同じ喫茶店で、私は慎之介の仲介により、その大物に会わせてもらった。当然、預金をしてもらおうという下心で会いに行ったのだが、その人を見て一目惚れした。(私は決してゲイなどではない。)高級スーツで身を包み、私に握手を求めてくる姿に、ビジネスマンとして格好いいと思ったからだ。その人を向かいにして、銀行用の地味な背広の私は、異質なヤンキーと並んで座ったが、そのテーブルは、周囲からどのように見えていただろうか。

 その人物は、山戸家という、都道府県別長者番付で一位になるほどの家の次男で、自身のビジネスでも大成功を収めている。
 そこでは、自己紹介して世間話をしながら、私の人生観について質問をされたのを覚えている。
「木田君は将来何になりたいんだ?」
「何って、私は銀行員ですけど」
「銀行に勤めるのが夢なのか?」
「いえ、そういうわけじゃ・・・」
「制約が無ければ、本当はどうなりたいのか教えてくれ」
そんなふうに、延々と夢を語らされた。そして最後に質問された時、私の人生は変わった。

「ここに1000万あるとしよう。全部お前にやるから好きに使え。と言われたら何に使う?」
ヤンキーは即答した。
「豪遊して、一晩で使い切る」
カッコのいい答えだ。山戸さんは笑いながら頷いていた。なぜならそのヤンキーの夢は、「ハーレムを作ること」だったから。
 しかし、私はこの質問に対してのいい答えを知っていた。こんな質問をされたことはないが、キクちゃんなら、こう答えて欲しいだろうと思う答えを考えていたからだ。
「じゃ私は、500万だけもらいます。残りの500万は、山戸さんに差し上げます」
「どうしてだ?」
「私はこんな大金の“正しい使い方”を知りません。山戸さんが使うのを真似て、同じように使ってみます」
 山戸さんは、千人以上にこの質問をされていたそうだが、こんな答えは初めてだと、目を見開いて言われていた。後に私は銀行を退職して、山戸さんの事務所に入ることになった。26歳の時だった。18歳も年が離れているが、今はほとんど親友のような関係で、結婚式の仲人にもなってもらった。