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わたなべめぐみ
わたなべめぐみ
novelistID. 54639
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ひだまりのねこ

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足跡



全速力で走り続けて
ついには息ができなくなって
ふとうしろをふりかえったら
たくさんの足跡がついていた

泥道の上に残る無数の足跡

最初はまっすぐためらわなかったのに
迷ったり立ち止まったり
横を向いたりうしろを見たり
何度も引き返そうとしては
やっぱり走ることしかできなかった
未練の足跡

靴には乾いた泥がこびりついていて
髪はぼさぼさで服は毛玉だらけで
みじめな姿に情けなくなって
それからまた足跡を見つめる

よく見れば
そこには何種類もの足跡があって
大きいのやら小さいのやら
あっちにいったりこっちにいったり
並走したりあとからついてきたり導いてくれたり

それはずっと自分の足元まで続いていて
まだ前を向いていて
そこでようやく
ひとりで走っていたわけじゃないと気づく

途中で消えてしまった足跡もあるけれど
走り続ける限りきっとずっと増えていく足跡

疲れ果ててしまって
ふと振り返ったときに足跡が残っているなら
それも悪くないと思った

未来につながる足跡を想像して
これから生きていく限りある時間に思いを馳せて
今日もまた私はゆっくりと走り出す



作品名:ひだまりのねこ 作家名:わたなべめぐみ