小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
わたなべめぐみ
わたなべめぐみ
novelistID. 54639
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

ひだまりのねこ

INDEX|4ページ/22ページ|

次のページ前のページ
 

待チ人来ル



見慣れた古い道路の
陽ざしの届かない暗い路地で
寒風吹きすさぶ中
君の車を待っている

こんなところに来るはずのない君が
突然便りなどよこして
時間まで勝手に指定して
独りよがりな文面に腹を立てながら

結局私はこんなところに立っている

頬を切り裂くような風に吹かれながら
どうか誰にも見つかりませんようにと
根拠のない罪悪感を抱いて
君の車を待っている

もう何年もあっていない君の
笑顔さえよく思い出せなくて
どうせなら来なきゃいいのにと
また矛盾したことを考え始めて

ひとり身をひそめるように
暗い路地に立っているのが情けなくなって
あと五台車が通りすぎたら帰ろうと
変な決意だけ固くして

1、2、3、4

五台目――銀色の車がすべりこんできた

いかにも君の好きそうな
けれど見たことのない2シーターの車が
私の目の前にぴたりと止まる

エンジン音を響かせたまま
運転席から君が身を乗り出して
助手席のドアを開けると

途端に懐かしい煙草の香りがたちこめて
私は体を締めつけられたように
動けなくなる

君から目を反らせなくなる

少し皺の増えた
けれど気が狂いそうなほど好きだった微笑みが浮かぶ

結局私は何も言えないまま
銀色の車に吸い込まれる

あんなに強く吹きつけていた風は止んで
私は煙草の香りに包まれる
頬に残る冷たさと
わずかに残る罪悪感を握りつぶして

やってきた待ち人は
すぐにいなくなるんだと言い聞かせて

作品名:ひだまりのねこ 作家名:わたなべめぐみ