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わたなべめぐみ
わたなべめぐみ
novelistID. 54639
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ひだまりのねこ

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1月3日



「やあ?元気にしてた?」

東京に住む弟から
三年ぶりに電話がかかってきた

彼の声を聞いたのは
三年前、母親の葬式のとき以来だ

「うん。みんな元気やで。そっちは?」
「あーうん。なんか関西弁ひさしぶりやなあ」

そう笑いながら
当人も関西弁になってることに気づいていない

要件は「年賀状ありがとう」だった
そしてすぐ「仕事いそがしくてさー」といつものフリになる

あーうん、と私は適当に聞き流す

父が死の間際にあったときも
母が突然死んだ時も
同じことを言っていた

正直、あまり聞きたくないセリフ

父の葬式のときは30分遅れてきた
母の葬式のときは喪主にならなかった

「仕事が忙しい」の一言で全てを片づけてしまうことに
心の狭い私は今でも納得がいっていない

父とはうまくやれていなかったから仕方ないけど
彼の唯一の理解者である母を失ったとき
彼はまだ27歳だった
私とも、母とも喧嘩別れしたまま
母はあの世へ逝ってしまった

だからもう責める気にはなれない

葬式のあとも、電話のむこうでも
彼はずっと笑っていた
どれほどの葛藤があったか推し量ることはできなけれど
私が踏みこんでいいものではない気がした

まだ二人で母の話ができない
けれど突然消えてしまうその命の重さに
無謀なことばかりしていた彼が気づいてくれたならいいと思った

私たちにはまだ元気でいてくれる祖母がいる
近いうちに弟にも地元に帰ってきてほしいと
この日初めて思えた

1月3日
それは母の命日
大晦日と正月と、命日の支度を同時に行う
三年たってやっとそのことにも慣れた

時が心をゆるめてくれる
尖っていた心を優しくしてくれる
私たちのまわりにはいつも明るく笑う人たちがいる

電話を切った時
ようやく心の荷物をひとつ
下ろせた気がした

作品名:ひだまりのねこ 作家名:わたなべめぐみ