ひだまりのねこ
紅白の坂道
幼稚園に続く急な坂道に
二十本の梅の木が植わっている
冬のあいだ寒風にさらされた裸の木は
季節外れの春一番に誘われて
ぽんと白い花を咲かせた
園庭にとび出してくる園児たち
みんな半そで裸足で
頭に赤白帽をかぶっている
たくさんの帽子は
紅白の梅のように
太陽に照らされて
はじけるような笑顔で
寒さなんて何のそので走り回る
冬の間息をひそめていた梅の木は
子どもたちの声に誘われて
ぽんと赤い花を咲かせる
坂道一面が紅白に彩られる頃には
新入園児のちびっこたちが
ドキドキしながらこの坂を登ってくるだろう
そして園を去っていく卒園児と共に
梅の花は役割を終えて
初夏には梅ジュースになる日を待ちわびる
ひいひいと急な坂道を登りながら
この道を登るのもあと一年なのだと
梅の木々を見上げる
柵の向こうから子供たちの声が聞こえる
息子たちの成長の喜びと
いずれ去りゆく寂しさを
紅白の梅に預けて
また明日もこの坂を登る