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女子外人寮

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寮までの送り道


運転席を蹴られた後、俺はルームミラーで彼女達が厭々シートベルトをしたのを確認し、ゆっくり再スタートさせた。
言葉なんて解らなくたって、何とかなるってこれほど強く感じたことは無かった。気迫は伝わる。ダメなものはダメなのだ。事故でも起せば元も子も無い。あいつらだって、家族のためにこんな環境で働いて仕送りをしてるんだ。事故で怪我をしたらどうなるのか考えた事があるのだろうか。

日本人経営者は彼女らを全く信用していない。10名程居る日本人作業者も彼らとの間に深い溝がある。言葉の問題でも、外国人、特に中国人と言う理由でもない。得体の知れない不信感を俺は感じていた。

ヘッドライトを点灯し、車内は行き交う車のライトに照らされるだけで女達の会話は無かった。本当は気の弱い俺が、なぜあんなに強く出たのか、自分自身のしたことを振り返った。
言葉が通じなければああする他俺の選択肢は無かった。そう考えると心が落ち着いて来た。
前任者の日本人の馬鹿は、定員オーバーの寿司詰め状態で、シートベルトもさせず、こいつらを運んだに違いなかった。

5分程で田んぼに囲まれた鉄筋コンクリート二階建て造りの建物の前に着いた。古びた建物は入り口の駐車スペースは車が回転出来るほどの広さだった。建物の横には、四輪とも全部パンクして、フロントガラスも蜘蛛の巣状に割れて埃をかぶった、黒い軽自動車が一台放置されている。其の横にはひと抱えもある塵バケツに、黒いプラスチック袋に入って溢れる程の野菜クズと紙屑がこぼれ出ていた。

俺は玄関前にワゴン車を止め、先に車を降り、紙屑の散らかる玄関の鍵を開けた。
そしてすぐ車に戻り「お疲れ、お休み」とぎこちなく声を出した。
女達は俺を無視し、無言で車を降り、ひと抱えもある内職の布包みを下げて、弁当箱と思しき紙袋をそれぞれに持って建物に入った。

そして最後に降りた女は、車のドアを開けっぱなしにして建物に消えた。
俺はなんて奴らだ、ありがとう位言えないのか!と腹がたった。
けれど、先刻の俺のやった事を怒ったままなのかもしれない。
そんな事を考えながら、又会社に戻った。

残った5人は車庫の前で内職包みを抱えたり、その上に腰を下ろしたりして、俺の帰りを待っていた。少し気の毒な気がした。けれど何も言わず車を横付けした。(どうせ言葉が通じないんだ・・・)

時間が経ったせいか、忘れてしまったのか、先に帰った連中と違って、盛んに車内でしゃべっている。無論俺にとって全く解らない中国語。けれど残されたこの女達は、一番後から日本に来た新参者である事は確かだった。先輩達に後から来いって、言われたに違いなかった。

若い女達で、スタイルも良いのもいた。化粧を全くしてないのと、一律にポニーテール風に黒髪を纏めジーンズを履いている。
やっぱり日本人の女とは違うと俺は思った。

寮について、5人を降ろすと、最後の奴はスライドドアを閉めてくれた。けれど力一杯閉めた為、バーンと大きな音がした。
俺はやりきれない思いがした。
まだ、あの事を怒っているのか。ドアの閉め方を知らないだけなのか。

「おやすみ・・」って言ってはみたが、返事もなければ有難うの言葉も無かった。
作品名:女子外人寮 作家名:桜田桂馬