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女子外人寮

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とんでもない連中に見えたけど


女達を送る仕事は毎日続いた。幸いにして迎えに行くのは古参の社員の古川重利がやっていた。
朝7時半には寮に到着する必要がある。そのため女子寮と会社の間を毎朝2往復しているのだ。彼は毎朝7時に出社し車庫から車を出し、女子寮まで行き来するのだ。
俺は古川に聴いてみた。
「先輩、毎朝大変ですね。早出手当って有るんですか?」
「有る訳ねーだろ!この貧乏会社が!」と吐き捨てるように彼は言った。
「それなら、僕の送りの時間30分はどうなるのですか?」
「お前経理マンってきいたけど、朝の手当てが無しで、夜は有りって、あると思うか?」
俺は言葉を失った。これはサービス残業だったのだ。

俺はこの会社に来てまだ2週間。経理総務で採用されたつもりだった。3カ月後に正社員と言う事で名刺までも貰った。丸三縫製株式会社 次長 及川斉。
名刺は対外折衝に必要だった。すぐに県下の縫製組合の会合に出されたり、社長が後援会長を務める市長の選挙事務所に使いに行かされたり。要は社長雑用と総務雑用の全てだった。

肝心の経理は社長の娘と専務の妻が交代でやっていた。会社は長男が専務、次男が工場長、俺が雇われた理由が見えないような気がした。パート社員8名、正社員3名。中国人女子縫製工40名程のスカートの縫製専門工場だった。

3年前に来て来春中国に帰国する研修生は3年生と呼ばれていた。3年生と2年生は縫製工場の3階に住んでいた。工場は1階部分が生地の裁断と材料及び製品の置場。2階部分が工業ミシンを並べた作業工場、4階は食堂と洗濯場と風呂場だった。

朝、俺は午前7時15分に出社する。そしてほぼ10人ずつのグループに分かれた、中国人研修生と称する女縫製工の出社状況を確認する。難しい名前の中国名を漢字と仮名で確かめ、出欠を確認する。そして、社長命令で社長と俺しか許可されていない3階の女子寮の見回りに行く。部屋の管理を彼女達がしっかりしてきたか確認する為に、15分間7つの部屋をチェックするのだ。

先ず、電気櫓炬燵など電気製品のスイッチの切り忘れ、水道水の流しっぱなしの点検。トイレ掃除の確認等だ。
電灯のつけっぱなし、櫓炬燵のいれっぱなし等毎日のように有る。毎日俺が消す羽目になる。息子でもある工場長に報告するが全く改善されない。
彼女達に連絡や注意がなされてないのか、それとも聴いても知らん顔を中国人がするのか、どうなっているのか全く分からなかった。

工場には中国からついて来た工場との仲介役の女通訳と、工場が独自に雇った仕事をしながら作業指示が出来る中国人男性通訳ヨウさんがいた。
俺は大学出の中国人通訳 ヨウさんに聴いてみた。
「キミの中国を悪く言うつもりはないけど、どうしてあんなにくどく電気を消すように言うのに、聴いてくれないんだ?」
「あははは、及川サン、中国は広いよ。北京から来た女なんていないよ。みんな田舎者さ。田舎に電気のメーターなんか有るって思う?そういう所からも来てるよ」
俺は唖然とした。電気がつけっぱなしの定額制らしいのだ。勿論十分に電気が使えるわけがない。
基本的条件が日本と異なるのだ。
「どうしてあんなにトイレが汚く掃除がきらいなんだ?女性なのに」って俺が尋ねる。
「及川さん、トイレって家別に有ると思う?有る事が前提で話すからおかしくなる。ない家もあるって考えれば ー 勿論日本のようにきれいなトイレだけど ー 掃除をしたことがないのは当然だよ」
俺は考え込んでしまった。とんでもない連中だって思っていたのは、文化の違いかもしれない。そう思い始めた。
作品名:女子外人寮 作家名:桜田桂馬