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女子外人寮

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日本人じゃない俺


土曜日の夕方の送りだった。
もう忘れたころだろうと思いながら、いつも助手席に座る女に俺は言った。
「今夜、ベッド、直しに行くから」
頷く女。
すぐ直すようなことを言っておきながら、暫く放置していた俺。
日本人になら遅くなって悪かったと謝ってから言うのだけれど、ただ修理する話だけを無表情に伝える。
どうせ複雑なことは解りっこないし、解ったところで今の俺にどうってことは無い。

一年生の寮に入り女達の部屋に入るのは二度目だった。助手席の日本語が解る女に案内させて、部屋に入る。
前回と全く変わりのないベッド。わずかな衣類がベッドの枕元に有る。

俺は入り口近くのベッドから直し始めた。部屋にいた女が一人、二段ベッドの下段にいたが、俺が手に持った電気ドリルや鋸を見てドアの外に出た。

俺は入り口に近いベッドから順に奥へ修理をし始めた。
女達がいい加減に打ち付け修理したベッドの底板の長い釘を全部抜き取り、40ミリのネジ釘を電気ドリルで打ち込む。木と木の間の隙間がみるみる接合される。そのあと隙間から瞬間接着剤を注入する。折れた横木は添え木をあて、木ネジで補強する。

全部修理するに2時間程かかった。
俺は木くずをざっとかきよせ、コンビニ袋に入れた。抜き取った釘は空き缶に入れ、部屋から出ようとした。

既に直ったベッドでは、シャワーを浴びた後と思われる女達がくつろいでいる。石鹸の匂いがする。思い思いの地味な色のジャージ姿でいたが髪が濡れたままだった。

修理に最初部屋に入った時、俺を見て出て行った女が、俺が直したばかりの入り口のベッドの2段目で、ベッドの間の通路に向かって足を出し、前後に揺らしている。
一人だけショートパンツを履いた女の白い足が、狭い通路で揺れている。
この時俺は、こいつらは女だったのだと感じた。

俺が其の横を素知らぬ顔で通り過ぎようとしたその時、女の足先が俺の脇腹に当たった。
俺は振り向きざまに、女の肉付きの良い太腿をぴしゃりと平手打ちした。
一瞬女の顔色が変わった。
俺は女の目を見て、すぐさまこう言った。
「ウオ アイ ニ―(I love you)」
みるみる女の顔が赤くなる。
周りの女が面白がって笑いながら「ウオ アイ ニ―!ウオ アイ ニ―!」と囃したてる。
ますます赤くなる女。

やっぱり女だったんだ。
俺は初めて喋った中国語が通じたと思った。
からかったのが通じた可笑しさで、思わず笑っていた。


修理が終わって帰るとき、助手席専属女がこう言った。
「アナタ ニホンジン ジャナイ。ニホンジン チガウ」

俺は生粋の日本人。外国人と接する時、日本人だと言う事を特に感じ、それを誇りに思う。
けれど、この時は日本人でないと言われ、なぜか嬉しかった。
作品名:女子外人寮 作家名:桜田桂馬