小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

女子外人寮

INDEX|14ページ/18ページ|

次のページ前のページ
 

ニセ残業報告書


翌日、俺は憮然とした態度で、会社に出た。
昨日、朝来たら突然の休暇指示の表示に、俺はキレていた。
事務の日本人の女は俺に目を合わそうともしない。文字は其の事務員の書いた筆跡だった。俺はぐっと我慢した。ここまで何度会社を渡り歩いたことか。

社長は俺にこう言った。
「及川、お前に休みの事連絡し忘れ済まん。事務の町田には連絡するように言ったんだが・・」
俺は笑って誤魔化した。
(お前の所為で、俺は無駄な通勤し引き返した。頭に来てパチンコに行ったら3万も負けた)って怒鳴ってやりたかった。

事務の日本人女、町田は、社長がいなくなった時を見計らって、こっそり俺に言った。
「ごめんね。社長に『連絡しなくて良いんですか?』って訊いたけど、良いって言ったから・・・」

昼食後、俺は社長に呼びつけられた。
「及川、お前、笹本の仕事引き継げ。もうあいつはいらん。明日、来る日だから、よく聴いとけ」
社長は俺が怒っているのを忘れたのか、そのフリをしているのか、とぼけた口ぶりで俺に指示した。
俺は、「解りました」と答え引き下がった。まだ検針機の作業が夕方まで有った。

翌日の朝、自称コンサルタントの笹本が俺に言った。
「及川君、社長から聴いてるね」と言って、スチールデスクの一番下の引き出しから、書類を取り出した。

4冊の残業報告書だった。それには研修生の残業時間が、個人別、班別に記入されていた。
やることは、実際の残業時間を、最低賃金の半額程の価格で払うため、ウソの残業時刻を計算し、書き直す作業だった。
笹井は、現場から上がった女達の作業時間報告書を電卓で計算し直し、書き込んでいたのだ。

計算にはもうひとつ絡みがある。入国管理局に提出した年間研修計画書があり、適当に休暇や研修座学時間も考慮する必要が有った。矛盾しないように慎重に書き直すのだ。
彼は一週間に一日、この(秘密の)仕事をやっていたのだった。

俺はまた馬鹿な仕事、インチキをやらされる羽目になってしまった。
それにしても、笹本は馬鹿だ。社長もと年寄りだから知らないのか。
電卓で計算なんかしなくてもエクセルで計算式を入れてやれば、簡単にできるのに。
一時間でできる仕事を半日以上かかってやっている。一旦表が出来上がれば、打ち込むだけで変換すべき数字は出るのに・・いや、勿体ぶって笹本が一日分の仕事にしているのかもしれない。

ここにはパソコンが無かった。不思議なので訊いてみた。二男の治郎さんは机の下からノートパソコンを取り出してこう言った「社長はパソコンがきらいなので・・内緒で使って・・」
俺はそれを預かり、社長のいない時、インチキ計算表を完成させた。

あの、黒ずくめの中国人通訳女、このインチキを知らないハズが無いと俺は感じていた。
縫製組合そのものも隠蔽しているのだ。
作品名:女子外人寮 作家名:桜田桂馬