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リーダーの死



「仕方がない、捨ててゆく 」

戦士が抑揚もなく吐き捨てた。汚い言葉の先には地に伏して命尽きようとしている仲間の姿がある。
 血管内に侵入した強い毒素が身体中を駆け巡り、命は悲鳴をあげていた。追い立てられる様に嘔吐を繰り返して吐き出す物はなにもない。弱々しい息使いの隙間から零れる血液混じりの唾液、治まらない四肢の痙攣。噴き出る冷汗が体を濡らして酷い悪寒が包み込む。最早僧侶の呼び掛けに反応できるような生命の余裕はなく、回復薬も解毒魔法も及ばないほどのショック症状。パーティーを統率してきたリーダーのシーフは、ダンジョンの地下5階、仲間達の足元で息絶えようとしていた。
 戦士が汚い言葉を使った理由は若い聖騎士に対する戒めからか、それとも愚かな若者を連れ立った己への憤りからか。重い沈黙を破って戦士の決断に異を唱える者などいない。症状の酷さを察した4人は戦士の冷酷な言葉に無言で同意するほかなかった。

 ことの発端は先程のバトルの最中での出来事。1人の若者がとった軽はずみな行動。後衛からのバトル補助を担うシーフ、僧侶、魔法使の3人の護衛を任されていた聖騎士は侍の劣勢を見てとり、自らの役目を忘れて前衛のバトルに参加してしまった。
 シーフはほんのひと時だったが聖騎士の護衛が外れた事に気付かずに側面を無防備としてしまい、ガーゴイルハンターの牙を首元に深く受けて強い毒素が身体中を駆け巡った。僧侶が速やかに排毒の治療を施したが間に合わず、致死状態に達してしまう。

 自らのとったお粗末な行動の結末に脅える聖騎士は、ただ苦しむリーダーを見つめ、パーティーのメンバー等とは視線を合わせる事が出来ない。
 戦士が魔法使に指図した。
 魔法使もその辛い指示を受け入れる。熟練の僧侶ではなく、あえて新入りの魔法使に指示を与えたのは、未熟な冒険者に再び愚かな行動をとらせない為の釘刺しである。
 未熟な魔法使は苦しみ続けるリーダーの傍に寄ると、震える掌に毒薬を握らせる。してやれるのは、それだけだった。