小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

イカ×スルメ

INDEX|4ページ/10ページ|

次のページ前のページ
 

やわらかな痛み




>>スwルwメwww流石期待の斜め上を行く、白紙ラスメロたんfeatかっちゃん!!! ところで私はソフトいか燻製が好きです。さて、白紙といえば三つ度萌え。というわけで、イカ×スルメ←ソフトいかはイカがでしょうか?? イカんせん春なものでテンションがおかしくてイカがなものかと思われるかもしれませんが、イカくしている訳ではないので、「イカんの意!」とイカらずに、ご容赦いかだければ幸いですイカ。では、イカしたかっちゃんへ、イカれた一観覧者より。



いいのか?ホイホイついてきちまって。
俺はソフトイカでも食っちまう管理人なんだぜ?








「アタリメ、大丈夫かよ!」


海辺に佇む彼の背中を見つけて、俺は大声を上げた。
監査の報告と言っても、帰ってくるのが遅すぎると思って、探しに出たのは正解だった。遠くから見ても、そう、彼の背にはきらきらと光るぬめり。あれは間違いなく、あの生意気な坊主。


「ソフトイカくん…」
「大丈夫…あ、しめって、あのクソガキ…!アタリメが水に弱いの知ってて」
「へ、平気ですよ、私は」
「平気なもんか!乾物に湿気は大敵なんだよ!ばか!」
「え、あ、すみません…」
「謝んな!」
「うっ…な、何と言っていいのやら」
「っ、あーもういい!ほら!歩けるか!」


アタリメは気が弱い。
それがあのマイカにいいようにされる原因だ。しかし、その性格を言ったところでまたアタリメは萎縮してしまうだけだろう。これ以上萎縮したら、粉になっちまう。

ちっ、と舌打ちしてアタリメの背中のぬめりを手で拭いた。


「あっ、ちょ、いいですよ!ソフトイカくんまで濡れちゃいますよ」
「俺はいいんだよ、ソフトだから水分には強いんだっつの。あーもーぬるぬるだな、こりゃ乾燥ワカメに頼むしかねーな」
「て、天日干しすれば乾きますから…」
「明日の太陽なんて待ってたら染み込むだろーが!いいから!行くんだ!」
「ぎゃっ、ちょ、吸盤とれますからっ」
「取れねーっつの!日が暮れる前に乾燥ワカメのとこ」
「わ、分かりましたからっ」


強引に引っ張ると、アタリメが泣きそうな声を上げる。やれやれと手を離すと、とぼとぼと先に一人で歩き出す。その背中は小さい、本当に裂かれたのかよと問いたくなるほど。後を追いかけて、隣に並ぶ。覗き見た横顔は、切なかった。


アタリメは馬鹿だ。
嫌なことを、嫌と言えない。海に住む仲間を心配してる。

アタリメは馬鹿だ。
その仲間はお前を見捨てたんだぞ。見捨てられて、お前は裂かれて、乾物になって。それほどの恥辱を受ける一因に、お前の一族がいるのに、なのになぜ、まだ庇う?

アタリメは馬鹿だ。
そんなことは何度も言った。抵抗していいんだと、守らなくていいんだと。でも、アタリメはきかない。耐えるだけ。何度も何度も、湿らせられてんのに、懲りない。



「次はいつ?」
「…明日」
「明日ァ!?何でそんな頻繁に来るんだよあいつ、そんなにこっちに来る必要あんのかよ!」
「さあ、私には…分かりません。でも彼がそう望むのですから」
「…無理だろ、このぬめりじゃ。明日くらい、俺が代わりに行ってやるよ」


一度だけ、前にもアタリメがこんなことになった日の翌日、あのマイカのガキに俺が代理として会ったことがある。けど、つまんなそうにして、簡単な報告だけして、それで終わり。
他は何もなかった。あいつ、俺がソフトだから何もできないでいやがる。その癖、湿気に弱いアタリメの前では威張り散らして…最悪だ。

しかし、アタリメは首を振った。


「いいえ…いいんです。私が行きます」
「はあ?そんな体で行ったらその内腐るぜ?」
「一日くらい、平気ですよ。日中ですしね」
「いいよ、俺行くから。遠慮すんなよ」
「いえ、そういう訳には」
「いいから」
「大丈夫ですから」
「大丈夫?これのどこが、」
「大丈夫ですと、言っているでしょう!」
「っ…」


アタリメが急に怒鳴るから、俺はびくっと身を震わせた。
隣にいるアタリメは、凄い形相で俺を睨みつけていた。


ああ、そう、

余計なこと、すんなって?



なんだよ、こっちはお前のこと心配して言ってんのに!
馬鹿馬鹿しい、俺はアタリメに冷たく笑った。


「ああ、そうかいそうかい。はは、俺の余計なお世話だったな」
「あ…ちが、すみません、ソフトイカくん。私は、その」
「いーよ!湿っても、腐っても、そうだな。そりゃお前の体だもんな、俺が何言っても野暮。それに、はん、そうか。お前って、あのガキのこと、好きなんだろ?あ?」
「っ…!」



自暴自棄に言ったデタラメの嫌味のはずだったのに。
アタリメは言葉を詰まらせた。俺もその反応に言葉を詰まらせた。いや、まさかそんなこと。

なあ、その肌がほんのりと火で炙られたみたいに赤いのは
なあ、この夕日があんまりにも赤いせいだろ?



「…違いますよ、断じて」



暫くの沈黙の後、アタリメが口を開いた。
ばか、ばか、そんなの全然説得力ねーじゃん、ばか。




「あっそ」




軽い返事を返して、俺はまた歩き始めた。
後ろからアタリメがついてくる。待ってなんかやらない。待ってなんかやらない。こんな顔見られたくない。



「…明日も、じゃ、頑張れば?」
「…はい」



ソフトイカ、なんて中途半端なんだろう。
ああ、ぼろぼろと零れるこれはなに?涙?いいや、これは違う。きっとアミノ酸が液化しただけ…それだけ。




作品名:イカ×スルメ 作家名:笠井藤吾