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ぼくらはみんな生きている

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多くの命を踏みにじった炎の群れは

五日後の朝 そぼ降る雨によって鎮められていた









小雨の中 黒い衣を纏ったエメラルドの森は 
命を落とした大勢の仲間たちを 静かに弔っている







そぼ降る雨はやみ、
静まり返ったこの森には、かつての面影は存在していない。
小雨の後に神聖な大気はなく、焼け焦げた匂いが森を満たしていた。
若々しかった木々たちに見る陰もなく、
大気の怒りが森を凪ぎ払った後には、
樹皮を失い黒くなり、すべての葉を失った木々たちが乱立していた。
雨に冷えた風が木々の間を駆け抜けてゆく。

その黒い木々たちの枝で揺れている、なにか、がある。
その黒い木々たちの枝から地面に向かう、なにか、がある。

それは、これまでは決して落ちることがなく、
鳥たちがツツいても決して割れることのない堅い殻に包まれた、木の実。
これまで風から守ってくれた無数の葉は焼けてなくなり、
その実は慣れない風に、揺られていた。
普段は森全体が風から守ってくれていたが今はちがう。
風に揺られ、その木の実は枝から離れると、割れる筈のなかった殻は、
炎の熱による亀裂と、落下の衝撃でその殻を砕き、
炎が焼き払った黒い土の上に、殻の中の種を放り出した。
そのまま土に埋もれてゆく種たち。
再び戻った鳥や昆虫に運ばれるていく種たち。
太陽の恩恵を受ける為の葉を焼き尽くされ、
黒く姿を変えた木々たちは墓標のようにも見え、
そこに『命』を感じさせるものは何もなかった。
それでも森は生きているし、長い年月をかけて命を溢れさせてゆく。
かならず。