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帰り道

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信号が変わったのでそのまま発信した。
やはり何だか気になるが、この道では振り向くのは危険な行動だ。
2、3度バックミラーとドアミラーで確認したが、やはり……。
しかし、男は、感覚的に自分以外の温度を感じた。いや感じるような気がしていた。
いつもならば、立ち寄ることのない所のコンビニの駐車場に入った。
車を止め、深呼吸のように息をつくと、後部座席を振り返った。
ベンチシートには、落ちかかったジャンパー。足元に黒っぽい動く布。
男は、深呼吸の吐くことを忘れたまま、一瞬声を詰まらせた。
「だ、だれだ?」ごく普通の言葉しか出てこなかった。
触れてもいいものか?と躊躇する気持ちとうらはらに左手が後部のソレに触れようとしていた。
掴んだ布は、フード部分のようだ。柔らかな髪が手に触れた。
「おい!お、おい!誰だよ?」
脳裏に凄く怖い映像が浮かぶ。いや逆に自分に危害が及ぶかもしれない。
そんな距離感を意識し保ちながら、突くように押した。
その時、顔を上げたその物体は、女のようだ。顔から血が流れていることもなく、
寝起きのような…どちらかといえば、とぼけた顔付きで男を見た。

作品名:帰り道 作家名:甜茶