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帰り道

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「あれ?ここは何処?」
「何処って車の中だし、あんた誰?」
「あれ?駐車場じゃない…ここ何処?何処を走ってるの?」
きわめて落ち着いた言葉のその女に男も気が抜けていくようだ。
「あの…あなたは誰で、どうして私の車にいるのか?いつ入り込んだの?」
「えーっと、歩いて疲れて車のドアが開いたからちよっとだけ休もうかと…私寝ちゃった?」
「寝ちゃったじゃなくて、まずドアが開くなんて変でしょ。ピッキングして何か取るつもりだったんだろう!」
女の目から涙が落ちた。
「おい、泣いたって…」
「ごめ……」
女は、うな垂れたままスライドドアに手を掛けた。開いたドアからそのまま降りて行った。
男は、車を発進させて駐車場から出るタイミングを待っていた。
バックミラーで女の様子を見る。駐車場の端まで歩いて行った。
(やれやれ、変なの乗せてしまったけど、帰るだろう)
駐車場から出て道路を少し走った時、バックミラーを見ると駐車場の端で座り込んでいた。
(おいおい。帰らないのか?まさか家が分からないなんてことないだろうし……)
関わりたくないとは思ったが、男はUターンをすると女を車に乗せた。
結局、会社の近くの電車の駅に下ろすと、階段を降りていくのを見届けた。
(結構、お人好しだな…)何となくにやついた。
男は帰路についた。

作品名:帰り道 作家名:甜茶