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愛憎渦巻く世界にて

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第11章 クラマス



 ウィリアムが運転する馬車は、城下町の石畳の道路を猛スピードで突っ走っていた……。城下町の人々は、その馬車を必死の形相で避けていた……。
「危ないじゃないか!!!」
その怒鳴り声は、馬車を避けた人だけでなく、馬車に乗っている人も発した……。
 馬車に乗っているシャルルとマリアンヌとメアリーとゲルマニアは、ウィリアムの乱暴な運転による振動で、なんとか座っているのがやっとだった……。車酔いをしたマリアンヌは、とうとうゲロを吐いてしまい、メアリーもそれに釣られてゲロを吐いた……。2人分のゲロの強烈な異臭が、車内に充満する……。シャルルはしばらく食事を取っていないから大丈夫だったが、ゲルマニアは嘔吐を必死に耐えていた……。
「代われ!!!」
嘔吐を避けたいゲルマニアは、車内から運転席に移り、ウィリアムと無理やり運転を交代する。
「急いで我が国の大使館へ向かってくれ!」
「ああ、わかった!」
シャルルたちの行き先は、ゲルマニア王国首都のこの城下町にあるタカミ帝国大使館だった……。治外法権である大使館に逃げ込めれば、後ろの追っ手にまた捕まらずに済むわけだ……。

「待てーーー!!!」

 その追っ手の怒鳴り声が聞こえてくる。ゲルマニアの王室騎士団の所属ではないが、たくさんの騎兵たちが、シャルルたちの馬車を追いかけていた。目的はもちろん、マリアンヌの奪還だ。少し離れているが、のんびり走っているわけにはいかなかった。
 この馬車は外交特権により、馬車からマリアンヌが引きずり降ろされるということは無いのだが、取り囲まれて身動きが取れなくなったらどうしようもない。なので、ゲルマニアは、挟みうちにされないように運転する必要があった。ゲルマニアの運転は見事なもので、追っ手との距離をどんどん伸ばしていった。


 そして、なんとか大使館のすぐ近くまで着いた。しかし、
「しまった!!! あそこにいるのは、私の部下たちだ!!! 大使館の見張りの任務を任せたままだった……」
大使館の門の前には、王室騎士団の数人の騎士たちがいて、門を塞いでいた……。おまけに、今は門が閉まっていた。
「他に出入口は無いのか?」
「無い。だが、まだマリアンヌの件の連絡が着ていないかもしれないぞ」
「そうかもしれないな」
ゲルマニアが、馬車を門の前に止めると、彼女に気づいた騎士たちが駆け寄ってきた。
「ゲルマニア様! なぜ、馬車の運転を?」
騎士たちは、突然のゲルマニアの出現と、彼女が馬車を運転していることに驚いていた。ここにいる騎士たちの指揮官の反応から、まだここに連絡が入っていないことがわかった。
「国王に、ウィリアム皇子を大使館に送り届けるように言われてな」
「なるほど。では、ムチュー王国のマリアンヌはもう死んだのですね?」
「あ…ああ、そうだ。通っていいか?」
「それは良かった! どうぞ、お通りください!」
指揮官は嬉しそうな様子でそう言うと、他の騎士たちに進路をあけるように命令した。あとは、門を開けてもらって、中に入るだけだ。そうすれば、もう安全だ。

 ゲルマニアは、自分の身が危なくなることなど、気にしていない様子だった……。

作品名:愛憎渦巻く世界にて 作家名:やまさん