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愛憎渦巻く世界にて

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「この人は味方です!!!」

 シャルルとマリアンヌが同時に叫んだ。声の大きさに驚いたのか、メアリーは、ゲルマニアの首のギリギリにナイフを止める。
「まだ信用できないじゃない!!!」
ただ、彼女は、シャルルとマリアンヌのセリフが理解できない様子でいた。
 そのとき、ウィリアムが馬車を急発進させ、その勢いで、メアリーはナイフを床に落とす。馬車の外から、観衆の怒鳴り声などが聞こえてくるが、今の彼らの耳には届かなかった。
「オレ、ゲルマニアさんに助けていただいたんです!」
「私も親切にしてくださいました!」
シャルルとマリアンヌが真剣な口調でそう言ったが、メアリーはゲルマニアを睨みつけていた……。
「メアリー。試用期間ということで、仲間にしてやってもいいんじゃないか? 特に今は、猫の手も借りたい状況なのだから」
そのとき、馬車を運転しているウィリアムがそう言った。必死に馬車を運転しているらしく、馬車が頻繁に揺れていた。
「……わかりました」
メアリーが渋々そう言うと、
「ありがとう」
ゲルマニアは、メアリーを起き上がらせた。メアリーは、まだ納得できない様子だったが、ナイフを拾うと座った。

「悪いが、少し揺れるぞ!!!」

 ウィリアムのその一声が聞こえた途端、シャルルとマリアンヌとメアリーは、激しい振動に備えた……。ただし、ウィリアムの運転事情をよく知らないゲルマニアは、ただポカンと座っていた……。

   ガタガタガタガタガタガタ!!!

 ゲルマニアは、すぐにウィリアムの運転事情を、身を持って知ることになった……。


 シャルルたちの馬車は、暴走して襲いかかってきた観客や、必死に馬車を止めようとしてくる兵士たちを、跳ね殺したり轢き殺したりしながら進み、死刑式が開かれていた広場から脱出した……。
 国王がそれを見届けた後、激怒したのは、当然のことだった……。もちろん、激怒したのは、国王だけでなく、兄や兵士や観衆も同様だった。
 ちなみに、イーデン大使とその部下たちは、最初から最後まで、その場で縮こまっているしかなかった……。

作品名:愛憎渦巻く世界にて 作家名:やまさん