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CROSS 第10話 『駆け引き』

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   ゴォーーー!!!

 地響きに似た音ともに、広場の端に放置されていた『帝国連邦軍制式有人戦車』が動き出した。低浮遊式のため、戦車は地面から少し浮いており、戦車の車体のあちこちに血が飛び散っていた……。 山口はグレネード弾を戦車に撃った。幸い、戦車にシールドは無かったが、元々装甲が固いため、当たった部分が少しへこんだだけだった……。山口はそのへこんだ部分を集中攻撃してやろうと、もう一度グレネード弾を撃とうとした。だが、自動小銃の小型グレネードランチャーは空になっていた……。山口は舌打ちしてから、腰から予備のグレネード弾を取り出そうとした。
 しかし、戦車が主砲を放ち、その砲弾が山口と佐世保の間に着弾した。直接爆発に巻きこまれはしなかったが、二人とも砲弾の爆風で壁まで飛ばされた。飛ばされた拍子に、持っていた武器を落としてしまった。戦車が放った砲弾は『強化ウラン弾』というものだった。その証拠に、二人のアーマーに装着されている有害物質検知器が「チキチキッ」と鳴って放射能があることを知らせていた。二人は石壁に当たって倒れて倒れていた。戦車はゆっくりと二人に近づいてくる。
「ここまでかもな」
山口が口に入った砂を吐きだしながら言った。
「こんなところで死ぬなんて嫌ですよ」
佐世保は咳こみながら言った。山口は無傷だったが、佐世保は右肩に傷ができていた。
 そのとき、山口の目にあるものが飛びこんできた。それは、持ち運び可能なロケットランチャーだった。
 すると、山口はそれを手にすると、近づいてくる戦車に向かって駆け出した。そんな山口を狙って、戦車は重機関銃をを撃ちまくった。銃弾は山口をかすっていき、山口の周りには銃弾に砕かれた小石が舞っていた。
 山口は戦車の目の前まで近づくと、浮遊する戦車の真下に滑り込んだ。頭ギリギリのところを、戦車の車体が通り過ぎて行く。戦車は混乱した様子で、砲塔を左右に動かしていた。佐世保はぼんやりとそれを見ていた。右肩の傷から出血した血が一滴、地面の石畳に落ちた。
 戦車の下を通り過ぎた山口は、戦車の後方に出てきた。そして、そのまま戦車から20メートルほど離れると、持っていたロケットランチャーを戦車の後部に向けた。戦車は山口が後ろにいることがやっとわかったようで、砲塔を山口のほうへ回し始めた。
 しかし、山口は、戦車の砲塔が自分へ向くよりも先に、ロケットランチャーの引き金を引いていた。「シューーー!!!」という推進音とともに、ロケットランチャーから発射されたロケット弾が戦車に向かって一直線に飛んでいく。

   ドガガーーン!!!!!!

 安っぽい爆発音がしたかと思うと、戦車はいくつかに分かれた状態でブッ飛んだ。砲塔は宙高く舞い上がり、そのまま、高台に突っ立っていた公使の上に落ちた。公使の断末魔が一瞬だけした。一度爆発した後も、残った戦車の車体は誘爆を起こしていた。そのたびに、小さなキノコ雲が上がった。