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悪魔の微笑みの男

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 と感じた。
 二人の間の距離感というものが、ある意味絶妙であればあるほど、却って、
「怖い気がする」
 と、監視している人たちに感じさせたことで、却って、
「関わってしまうと、余計なわだかまりを生むことになる」
 と考えて、わざと、静観するということにするのであった。
 そういう意味では、道子としては、
「少し不安にも感じた」
 ということである。
 しかし、冷静になれば、
「彼らが、大丈夫だと判断したのであれば、大丈夫なんだろう」
 と思うのだった。
 それに、自分を見ている視線が、別に、
「異常なもの」
 という意識はなかった。
 しかし、自分で感じるだけの視線ということだったので、
「まったく安心」
 というわけでもないのも事実だった。
 それでも、安心感があったのは、その視線に、
「暖かさ」
 というものが感じられたからだった。
「包み込まれるような包容力」
 というものが感じられ、その視線の奥にあるものが、今の自分にとって、必要なものだと感じたのだ。
 ということは、
「お互いに刺激し合うことで、相乗効果のようなものが生まれ、それが、いい方向に、お互いに向かうのではないか」
 と感じたからだ。
 この思いは、今までに感じたものではなかったが、
「でも、以前どこかで感じたことがあるような」
 という、それこそ、
「デジャブ現象」
 と言えるようなものを感じたからだった。
 その感覚は、
「私は一人っ子なんだ」
 とずっと思ってきたはずなのに、たまに、夢の中だと思うが、
「お姉ちゃん」
 というものが出てくることで、感じるのだった。
 夢だから、
「目が覚めるにしたがって忘れていくものだ」
 ということであるが、この夢も確かに、
「記憶から欠落されていく」
 とは感じるが、
「姉がいる」
 という意識だけは残っていて。
「姉の夢を見た」
 ということは分かっているのであった。
 だから、道子は、姉の存在という感覚も、
「デジャブ現象」
 というものも、どちらも信じて疑わないのであった。

                 悪魔の微笑み

 そんな姉の存在に気が付いた時、道子は、
「姉の後ろからこっちを見ている人がいる」
 ということを感じた。
 さすがに、別の方向から見ている、道子の監視員たちには、そこまでは気づかなかった。
 気づくとすれば、それは、
「二人の延長上」
 というところで見張っていない限りは気づくものではない。
 なんといっても、その視線は、姉妹の距離の倍の距離で見ているのだから、道子としても、その視線を、すぐに気づくというものではなかった。
 だから、逆にいえば、
「道子だから分かった」
 ということで、それだけ、
「さといタイプだ」
 ということが言えるのではないだろうか。
 実際に、その視線は、最初は、
「姉の背中」
 を見ていて、そのうちに、道子を見るようになると、最後には、
「二人を交互に見ている」
 ということだったのだ。
 もし、まわりの監視員たちが、その視線の存在に気づいたとすれば、
「すぐに行動を起こしているはずだ」
 ということになる。
 そういう意味では、道子は、
「その視線だけを怖がっている」
 といってもいいだろう。
 まわりから見ている、
「監視員たち」
 も、途中から、
「お嬢さんの様子がおかしい」
 とは思っていただろう。
 そして、その時、姉の顔を見るが、
「別に怪しいところはない」
 と思うのだから、おかしいのはおかしいが、その原因がハッキリとしないということで、
「飛び出していくわけにもいかず、とりあえず様子を見るしかない」
 ということで、意見は固まっていたのだった。
 その怪しい視線というのは男で、その男が、姉の背中を見ていたことも分かっているのは、道子だった。
 だが、その男がこっちを見た時、道子は、まるで金縛りにあったかのように、急に動けなくなってしまう。
 表情は怖っているとおうのは分かっているが、それはあくまでも、自分だけが感じることで、
「本当はどんな表情をしているというのか、それが気になる」
 ということであった。
 しかも、その男は、道子の顔を凝視したかと思うと、その後、微笑むのであった。
 それまで、真剣なまなざしで、視線を浴びせていたのに、急に微笑むのである。
 それを考えた時、
「まるで、悪魔の微笑みではないか」
 と思うと、その正体を知りたいという思いと、あくまでも、怖いという思いとは、交錯しているのであった。
 その思いを、感じていると、
「このままの状態がこれからも続くのは耐えられない」
 ということで、
「あまり続くようなら、さすがに、私の監視員たちに報告するかな?」
 と思った。
「姉のことを知っているかどうか分からない」
 という状態だったので、自分から、姉の存在というものを話すというのは、気が引けたが、それが、
「姉を助けることにもつながる」
 ということを考えると、
「これが一番の最善の方法なのではないだろうか」
 と考えられたのだった。
 それを考えると、
「いずれは話そう」
 と思っていたのだが、実際には、そこまですることはなかった。
 というのは、
「そろそろ話そう」
 と思ったのを、相手は知ってか知らずか、道子の目の前、つまりは、
「姉の背中」
 からいなくなっていたのだ。
「これで大丈夫」
 と道子は考えていたが、実際に果たして、安心してもいいものだろうか?
 後から考えて、
「やっぱりあの時、もっと早く、監視員たちに話しておくべきだったんだ」
 と思うようになるとは、その時は思ってもみなかった。
 さすがに、
「気のせいだった」
 とまでは思わないが、
「事なきを得た」
 というのは、願ったり叶ったりということで、必要以上に心配をしないで済んだということはありがたいといってもいいだろう。
 だから、何も言わなかったことで、
「姉にもよかったことなのだろう」
 と思っていたが、そんなことはなかった。
 あの時の、
「悪魔の微笑み」
 というのは、自分の思い過ごしでも何でもなかったということであった。
「姉というものを、どこまで知っているか?」
 ということを後になって思い知らされた。
 最初こそ、
「何も知らない」
 と思っていたのだが、実際には、
「姉妹なんだから」
 という思いからか、
「ずっと一緒にいたような気がする」
 という錯覚からか、
「本当は、誰よりも知っている」
 と思うようになっていたのだった。
 しかし、実際には何も知らないということを、本当は、
「あの悪魔の微笑み」
 というものから分かっていたといってもいいだろう。
「知っていたというよりも、知ったことを思い知らされた」
 といってもいいようなことであり、それが、まだ、
「リアルではなく、感覚的なものでしかなかった」
 ということも、後になって思い知らされたということであった。
 つまりは、
「思い知らされる」
 というのは、リアルな感情ということであり、
「その感覚は、今まで育った中で、あまり感じたことのないようなことだった」
 ということである。
 つまりは、それだけ、
「何も考えずに生きてきた」
作品名:悪魔の微笑みの男 作家名:森本晃次