悪魔の微笑みの男
「雇われ社長」
という形になっている。
しかし、実際に、
「社長」
といっていいのは、専務であり、遺言によって、
「道子の旦那になるべき男」
とされている男の父親であった。
彼も、専務として世襲をしていて。そもそもの先祖から、この家の主人であり、会社の大株主として君臨する桜井家とは、過去の時代から、
「助け合う」
という形で、時代を乗り切ってきたのであった。
というよりも、
「逆に時代を収めてきた」
といってもよく。時代をさかのぼるうえで、余計に、
「過去の方が、深いつながりだったのかも知れない」
とも感じるのだった。
なんといっても、時代は、過去の方が、切羽詰まった状況にあったといってもいいかも知れない。
「封建時代であったり、戦国時代。さらには、大日本帝国の時代など、それ以前の政権の課題に直面しながら、その解決を目指し、先の時代を育んでいく」
というのが、
「時代を生きる」
ということになるであろう。
これは、
「国家単位においても、個人や法人単位でも同じだ」
といってもいいだろう。
だから、
「執事のような秘書」
というものと、社長というものが、それぞれ世襲体制を保っているというのも、悪くはないだろう。
今の時代でこそ、
「同族会社」
というものはどんどん減ってきているが、確かに当時は、
「同族会社は長持ちしない」
と言われた時代があったが、それはあくまでも、
「バブルの崩壊」
などという、
「時代にそって変わっていかなければいけない」
ということになってきたことで、
「それまでの神話が許されない」
ということになってきたのだろう。
そんな中、
「そもそも、双子は忌み嫌われる」
などという、それこそ迷信といってもいいこんな神話に基づいて、
「姉を里子に出す」
ということを行ったのだ。
あの頃では、
「それも当たり前だ」
と言われたかも知れないが。それでも、時代は、
「自由主義」
という時代。
「表沙汰には絶対にできない」
というのも当たり前の話で。特に今のように、
「コンプライアンス」
などというものを重視する時代に、差別的な行為が許されるわけもない。
ただ、それも、本当に、
「モラルや道徳的な発想」
というものからなのか、それも難しいというところで、果たして、
「姉の存在を、いい加減明かしたとしても罰は当たらない」
と考えたのかも知れない。
実際には、
「大旦那」
とすれば、
「そこまで厳しく隠す必要もないのでは?」
ということで、
「執事である専務」
に相談をしていた。
会社には専務が二人いて、実際の専務職を行っている人と、彼のような、
「執事」
としての役割を担う人がいた。
実際には、圧倒的に、
「執事」
の方が大変である。
忙しさというのもしかるべきで、なんといっても、精神的なところを担うということで、ある意味。
「失敗は許されない」
ということになるだろう。
だから、実際には、
「これだけ長く一緒にいたのだから」
ということで、
「夫婦仲は悪くないだろう」
と思う人もいるかも知れないが、
「長ければ長いほど、一度生じた溝を埋めるのは難しい」
ということで、そのために必要なのが、
「執事としての専務の存在」
ということだった。
それだけに、
「信用がおける相手でなければいけない」
ということから、
「血のつながり」
とは違う意味での、つながりであった。
実際に、
「執事の家系と、社長の家系とでは、今までに血のつながりというものがあったことはなかった」
のであた。
それを考えると、
「なぜ、社長は、あんな遺言書を残したのだろうか?」
ということである。
まだ、その時は、
「会長は存命」
ということだったので、その遺言書の内容までは分からなかった。
しかし、この遺言書は、間違いなく、
「執事を交えて作られたもの」
といっておいいだろう。
この遺言に、
「大奥様」
が絡んでいるわけはない。
なんといっても、
「遺産相続の対象者」
ということだからである。
もっとも、執事の方は、
「金銭的な相続」
というものには関係はないが、
「会社の存続」
ということと、
「執事として、桜井家を守る」
という使命があり、そのことを生前から意識させて、実際に、その通りに執行されるということから、
「遺言書作成」
ということに際し、
「大切な人材」
ということで、制作を担うというのも当たり前のことだったに違いない・
だが、
「この時、奥さんと仲たがいをしていた」
という予感が執事にはあった。
だから、
「正しい精神状態だったのかどうかは難しい」
というところだったので、それこそ、
「執事の腕の見せ所」
ということであった。
ただ、そのせいからなのか、
「もう一つの遺言書」
という歪な形の遺言が残るという形になったのだ。
それを考えると、
「そもそも、会長が、姉の存在というものを、どのように考えていたのか?」
ということになるのだ。
奥さんとすれば、さすがに、身体も弱ってきたことで、なんといっても、
「どこにも非があるわけではなく、ただ、双子は忌み嫌われるというだけで、ひどい目にあったであろう妹のことを考えると、不憫でならない」
ということになるだろう。
「同じ姉妹なのだから、本当は同じように育ててあげればよかった」
という後悔は、
「会長よりも、奥さんの方が数倍強い」
といってもいいかも知れない。
しかし、奥さんは、その分、
「プライドも高い」
と言われている。
だから、
「自分がこんな後悔をしている」
などということを他の人に知られるということは、実に辛いことだと思っていることであろう。
「あの子は、今どうしているんだろう?」
ということで、
「誰にも内緒で奥さんは、子供の様子を探偵を雇って、探らせていた」
ということであった。
それこそ、
「極秘」
ということで、少々高いかも知れないが、一番の選任の決め手となったのが、
「守秘義務の徹底」
ということであった。
「探偵の技量は、それほど差はないだろう」
と思っていた。
しかも、
「そんなに難しい依頼でもない」
ということから、最優先されるのは、
「極秘に耐えられる人間かどうか」
ということであった。
そういう意味で、
「探偵を雇って探らせている」
というのは、大旦那も知らないということであったが、ただ、
「誰も他に知っている人がいない」
というわけではなく、実際には、
「執事としての専務」
が知っていることになるのだ。
だから、
「執事は、会長にも奥さんにも顔が利く」
ということであった。
実際に、今の会社を仕切っている社長など、完全に、
「お飾り」
ということなので、
「誰もがお飾りだと分かっているので、少し今は会社は頼りないところにいる」
ということになっているのであった。
会社というものをいかにやりくりできるかということは、会長だけが今のところ分かっているといってもいいだろう。
姉の性格



