夢のあれこれ
「結婚というのは、憧れだけではないんだ」
ということを分かっていなかったのが、結婚というものに対しての、
「私の罪ということになるのかも知れないわ」
と思っていたのだった。
だが、結局二人は、旦那の思惑通りに、つかさがパートに出るということになった。
しかし、
「旦那の思惑通り」
というのは、
「つかさがパートとして働き始める」
というところまでだったのだ。
「これで一安心」
と旦那は思っていたが、旦那とすれば、
「奥さんの環境が変わったことで、立場が変化し、家庭が崩壊することになる」
ということなど、思いもよらなかった。
「知る由もなかった」
といってもいいだろう。
パートに出たのは、近くのスーパーで、
「子供がまだいない」
ということで、比較的、簡単に見つかった。
なんといっても、
「夕方の忙しい時間に、子供がいる人は、保育園に迎えに行って、それから夕食の準備」
ということになることから、なかなか、肝心な時間には帰ってしまうということで、
「保育園に預けている人」
というのは、敬遠されたであろう。
実際に、スタッフ側との交渉が決裂して、
「辞めてしまう」
という人も結構いて、逆に言えば、
「入れ替わりが激しい」
ということで、求人数も少なくはなかったのだ。
しかも、つかさの場合は、
「旦那が結構残業する」
ということで、結構遅くまで業務ができた。
最初の契約よりも、次第に、勤務時間も長くなってきたのは、店長から、
「少し色を付けるから、勤務時間を延ばしてもらえるかな?」
というのを、
「いいですよ」
といって、簡単に引き受けていたということからであった。
旦那とは違うタイプの男性で、しかも、
「雇う側」
ということで、かなり下手に出ている。
今まで、
「旦那しか男性を知らなかった」
ということで、
「こんなに、優しい人もいるんだ」
ということから、元々、おとなしい性格のつかさは、ずるずると、言いなり状態になっていたのだ。
実際に、二人の間に怪しい関係が生まれてきたとしても、無理もないことだった。
だが、二人の関係が、長く続くということはなかった。
というのは、
「スーパーの店長」
であったり、
「フロア長」
というのは、
「パートの女性を使ってなんぼ」
というくらいなので、対応には長けているといってもいいだろう。
だから、つかさのような女性を手なづけるなどということは、簡単にできるということで、しかも、皆、
「旦那がいてのパート」
ということで、立場的には、そんなに違っているというわけではない。
それを思えば。
「おいしい立場だ」
と思っている店長クラスもいるのではないだろうか。
しかも、
「仕事としては、あまり楽しい仕事ではない」
と思っている人も多いようで、そういう人が、
「パートと不倫に走る」
というもので、
「仕事に、生きがいを感じるなどない」
と思っている人たちであろう。
奥さんとしても、
「旦那に倦怠感を感じている」
という人であったり、
「子供が中学生くらいになって、少し手がかからなくなった」
という人に手を付けるということもあっただろう。
「子供が中学に入ると、もう親というより、世界は友達との関係になるということで、親とすれば、気に病むことはあっても、手はかからない状態なんですよ」
という人もいる。
年齢的に、まだ三十代くらいの奥さんであれば、店長とすれば、年齢の高い人からすれば、ちょうどいいくらいかも知れない。
これが、
「チェーン店の店長」
ということであれば、まだ若い人もいるかも知れないが、
「パートと店長の不倫」
というのは、普通にあることで、実際にはそれぞれに事情というものも多種にわたってあることであろう。
つかさも、最初は店長と不倫関係にあったが、相手は、
「海千山千」
ということで、不倫経験はかなりのものだったのだ。
だから、
「不倫相手を同時期に複数持つ」
ということもあったようで、実際に、別れることになったきっかけというのも、
「自分以外にも不倫相手がいた」
ということであった。
しかも、そのことを知らされたのは、その不倫女性からであった。
「店長は私のもの」
という形で、完全に喧嘩を売ってきたのだった。
つかさとすれば、その瞬間、
「バカバカしい」
と思ったのであり、相手の女も、店長も、急に情けない人間に見えてきたのであった。
言ってきた女というのは、普段から、目立ちたがり屋ということで、
「人の輪の中心にいないと気が済まないタイプの人」
ということで、
「そういう人は結構いる」
ということから、
「どうせ他人なんだ」
と思って、期にもしていなかった。
しかし、それが、
「自分と同じ不倫をしていて、相手が同じ」
ということであれば別であった。
しかし、実際には、
「自分にマウントを取ってきている」
ということがあからさまに分かると、そもそも、
「他人事だわ」
と思っていた相手だっただけに、
「わざとらしさというものが分かってきた」
と思った時点で、
「バカバカしい」
と感じたのであった。
さらに、
「そんな女を私と天秤に架けていたんだ」
ということを店長に感じると、一気に冷めてくるというのも、当然だということになるだろう。
そう思うと、
「一日でも、こんなところにはいられない」
ということで、その日に、パートを辞めた。
相手の女は、
「私の勝ちだ」
と思っているだろうが、こっちは、一切お構いなしだと思っていることで、気にもしていない。
逆に、気にしすぎてしまうと、却って相手に、
「闘争心を植え付けることになり、余計に、こっちが相手を挑発したかのように感じ、あくまでも、自分の正当性というものを感じさせることになるということで、こちらの敗北というものを自分で認めたことになる」
と考えると、
「これほど嫌な間隔もない」
ということになるであろう。
だから、
「その日のうちに辞める」
ということは、相手が、自分の正当性を感じたとしても、それは、
「負け犬の遠吠えでしかない」
ということだ。
そういう意味で、
「逃げるが勝ち」
という言葉があるが、まさしくその通りだといってもいいだろう。
だから、間違いなく、すぐに辞めたことは正解だったといえるだろう。
自暴自棄
つかさは、もちろん、
「スーパーを辞めた」
ということを旦那には話したが、理由に関しては一言も言えない。
「そんなこと、いえるわけはない」
ということであった。
「せっかく、結婚生活を取ってパートをしようと考えた」
ということだったので、ここで、それを壊すようなことができるはずはない。
ただ、実際には、
「夫婦間において、うまくいっていないというのは変わったわけではない」
ということで、
「いつ離婚しても別に構わない」
という思いはあった。
ただ、
「それはいまではない」
というだけのことだったのだ。
それでも、つかさはまたパートを探し始めた。



