詐欺事件のフィクション
というのも、ある意味、無理もないことなのかも知れない。
実際に、
「批評をしてほしい」
ということであれば、有料の、
「作家養成講座」
であったり、
「文章講座」
などというものにでも入っていれば、叶うことであろうが、そもそも、なりたい人が少ないわけなので、そんな講座も、需要がないということで、
「いろいろ探してやっと見つかる」
という程度であろう。
そういう意味で、
「原稿さえ送ってくれれば、批評して返す」
ということであるから、ありがたいといえるだろう。
だから、良治も、途中から、
「これは詐欺だ」
と感じた時、原稿を送ることを辞めようとはしなかった。
それは、
「批評してくれるのだから、甘んじて受ければいいんだ」
ということであった。
「どうせ、相手は詐欺なんだ」
という思いと、
「批評に関しては、結構しっかりしている」
ということから、自分にとっての利用価値は十分だといっていいだろう。
だから、最後に相手に切れられても、そんなに怒っていたわけではない。
言葉的には、結構きつい言い方であったが、それも、わざといっているわけで、思っていることを爆発させたというだけのことだった。
それを考えれば、
「詐欺相手に、こっちが相手を欺いている」
という快感に浸ってもいたのであった。
案の定、詐欺はすぐにバレる形となり、金を出した人が、被害を被るということになった。
だが、良治とすれば、
「それはそれで、自業自得というものだ」
ということで、
「あんな簡単な詐欺に引っかかる方が悪い」
とさえ思っていた。
中には、かなり借金をして本を出した人もいるだろう。
そもそも、
「本を出したいという人の目的」
というのは何であろうか?
「作家になりたい」
「本を出したい」
というのが、最終目標なのであろうが、そのために、出版社に、
「何を期待した」
というのだろう。
訴えた人たちの言い分として、
「有名本屋に一定期間並べる」
という触れ込みなのに、
「本屋に並んでいない」
ということを理由に詐欺として訴えているようだ。
複数の被害者が、
「集団訴訟」
というのを起こしたり、個人で訴訟を起こすという人が複数いたりするわけなので、出版社としては、かなり大変だったことだろう。
なんといっても、彼らの生命線というのは、
「本を出したい」
と願う人が、原稿を送ってもらうということが一番である。
そのために、高い広告料を払って、雑誌やネット、新聞広告などに記事を載せる。それも、結構な経費となるだろう。
ということは、絶対的に必要となるのは、
「信用」
ということである。
「詐欺として訴えられている」
というところに、
「誰が原稿を送るというものか?」
ということで、一気に、信用は失墜して、
「原稿を送ってくれる」
どころか、
「詐欺として訴えられる」
という方が多いのだから、もう破綻するしかないというわけだ。
そして、破綻ということになると、
「詐欺であっても、会社を守る」
という制度がある。
破産して、差し押さえなどということになると、相手には弁護士がついたりして、
「お金の返還請求」
というのをしても、うまく逃げられる。
最悪、
「債権放棄」
ということになりかねない。
特に、お金は払って、結局、まだ本ができていない人は、完全に、
「お金を取られた」
というのと同じだ。
しかも、
「本屋にもどこにも出すこともできなかった、本の在庫を、本来であれば、作者に返すというのが当然」
ということなのだろうが、法律的には、所有者は出版社ということになるので、その在庫は、
「八割かけくらいで、作者に買い取れ」
ということであった。
めちゃくちゃもいいところである。
いくら、
「騙される方も悪い」
という、因果応報だといっても、あんまりと言えるだろう。
そんな詐欺商法で、実際に、
「借金にまみれたことで、人生を壊してしまった」
という人も少なくはないだろう。
良治は、最初から、
「詐欺だ」
と分かっていたので、そんなことはなかったが、実際に、
「本を作ったけど、在庫を引き取る金もなく、本を作る時の借金だけが残り、在庫も、元原稿も返ってこない」
というのが当たり前ということであった。
それが、
「自費出版社系の会社による、詐欺事件
という、社会問題だったのだ。
恐怖の悪夢
良治が大学二年生の時にバイトしていたケミカル工場であるが、結局は、
「一年くらい続けた」
ということであった。
本来であれば、
「もう少し続けたい」
と思っていたのだったが、
「これから、単位取得であったり、就活などと、忙しくなる」
ということで、次第に、バイトに来れる日が限られてきた。
最初は、毎日通っていたが、そのうちに、週2日くらいになり、結局、
「月に数日」
ということで、バイト先の方でも、
「定期的に来てくれる人がほしい」
ということで、また求人を出したということで、さすがに、
「辞めてほしい」
とは言われなかったが、良治としても、
「それならそれで仕方がない」
ということから、
「それじゃあ」
ということで、辞めることになった。
ただ、せっかく他の従業員とは仲がよかったので、
「たまに遊びに行く」
ということくらいはあった。
会社の人も、
「遊びに来てくれるのは歓迎」
ということで、良治としても、
「仕事の邪魔にならない程度に」
という形でたまに来ていたのだ。
その工場に、高卒で入った人がいて、同い年ということで、一番仲が良かった。
バイトをしている時、仕事が過渡期ということで、最終電車に間に合うかどうか分からないくらいになった時、
「うちに泊まればいい」
といってくれた。
最終で帰ったとしても、翌日また朝から出勤しないといけないということで、帰ってから寝ても、
「すぐに起きないといけない」
ということになり、
「バイトとしては、結構きつい」
といってもいいだろう。
そういえば、あのバイトでは、結構残業手当で儲かったという部分も大きく、夏休みなど、
「バイトを一週間くら休んで、友達と旅行に出かける」
ということもしたりした。
「遊びは遊び、バイトはバイト」
ということで、キリのつく考え方ができるのも、
「大学生の特権だ」
といってもいいだろう。
あれは、大学三年生の時の、
「後期試験」
というものが終わり、一段落ついた時だった。
「久しぶりに工場に遊びに行ってみるか」
と思って、朝から出かける準備をしていた時のことだった。
いつものように、テレビをつけていたのだが、それは、別に意識して見ているというよりも、
「テレビがついていて、番組が流れている」
というだけだった。
朝というと、どのチャンネルも、
「朝の情報番組」
というのをやっている。
それも、どの局もそんなに変わりがないところであった。
出てくるキャスターはアナウンサー、コメンテイターとして、
「昔、お笑い芸人だった」
という人ばかりで、
作品名:詐欺事件のフィクション 作家名:森本晃次



