予知夢を見るということ
というのが分かると、それに便乗した形になったことで、普通の結婚に比べて、半分くらいの短さでの結婚となったのだ。
結婚式というのも、別に会社の同僚や上司を呼んでの披露宴というような大げさなものはしなかった。
「そんな贅沢はお金の無駄」
というのが相手の考えかたで、実は、こちらの家族も同じことを考えていた。
「披露宴の代わりに、親族同士で、食事会を開けばいい」
ということであった。
そもそも、
「結婚式とおうものに、そんなたくさんの金を使うというのは、悪しき伝統といってもいいのではないだろうか?」
と考えていた。
「結婚式に出席するのが好きな人もいるだろうが、ほとんどは、休みの日に、呼び出されるということで、迷惑に思っている人もいるだろう」
というのが、家族の考えかただった。
しかし、桜木は少し違った。
桜木にとってのこの結婚は、
「社内恋愛」
ということであるが、
「社内恋愛ということは、同僚や先輩の中に、自分の結婚相手に気が合った人もいたかも知れない」
と考えると、
「俺なら、そんな結婚式、出たいとは思わない」
と思うだろう。
逆に、
「ぶっ潰してやりたい」
という気持ちになるだろうから、結婚式に参加したとしても、その顔は憎悪に満ちたもので、
「その場の雰囲気をぶち壊す」
といってもいいだろう。
もっとも、そんな人は、
「誰が好き好んで好きな人の幸せそうな姿を見たいと思うものか」
ということである。
だから、
「身内だけの結婚式」
ということで成立しているのであった。
「桜木の母親がいない」
という理由とすれば、
「結婚相手である彼女にだけは、正直に話をしていた」
ということであるが、家族に対しては、
「亡くなった」
ということにしたのだ。
「いくら結婚することで、相手の家と結びつきができる」
とはいえ、
「それまでの、家族関係をすべて暴露するということはないだろう」
ということであった。
「それぞれの家では、人に言えないという秘密が、一つや二つはあってしかるべき」
と思われていた。
家族の中に、
「元不良がいた」
ということであったりというのは、普通にあることだと思えるのであった。
そんな桜木が結婚した相手というのは、
「柏木頼子」
という女性で、
「商業高校を出てから、大学にも進まず就職した」
ということで、年齢的には、桜木の方が年上だが、会社では、彼女の方が、
「一年先輩」
ということだったのだ。
頼子という女性は、小学生の頃から、あまり、人とかかわりを持たないというタイプの女の子だった。
友達といっても、別にいるわけでもない。
かといって、家族といつも一緒にいるというわけでもないので、それこそ、
「いつも孤独な女の子」
ということであった。
というのも、まわりから、
「あの子は不気味だ」
と言われていたからだった。
というのは、
「何かよく分からないが、頼子には、何か不思議な力がある」
ということだったのだ。
「何かよく分からない」
というのは、その経験をした人が、
「別々の特殊な力を見た」
というもので、それが、
「予知能力」
のようなものであったり、
「偶然、人が危ないところに通りかかり、彼女の行動で命が助かる」
というような、その時は、
「予知しているわけではない」
ということであるが、あくまでも、偶然ということなのだが、実際には、
「偶然という言葉で片付けられない」
ということで、その時に一緒にいて、その力のようなものを見た人とすれば、
「それが本当の力なのか分からない」
と思うだろう。
しかし、偶然かも知れないが、
「ここまで不思議な力を見せつけられると、簡単に無視はできない」
ということになるのだ。
それは、家族にとっても同じことで、
「家族の一員」
ということで、
「かわいい娘」
と口では言いながら、クラスメイトだけに限らず、家族までもが、
「気持ち悪い」
と思っていたに違いない。
昔であれば、
「双子は忌み嫌われる」
ということで、
「一人は里子に出される」
などということがあっただろうが、まさに、そういう意味で、
「頼子は家族からも、忌み嫌われていた」
といってもいいだろう。
とはいえ、平成の時代に、
「忌み嫌って、養子に出す」
というようなことが行われるわけもない。
「双子が生まれたから」
ということであれば、いくら、
「都市伝説」
とはいえ、叶うかどうか分からないが、
「養子に出す」
ということに、説得力はあるだろう。
しかし、ただ、
「気持ち悪い子供」
というだけで、養子に出すわけにもいかない。
そもそも、
「養子縁組する方も、まさか、そんな理由で養子に出されるなどということを知る由もない」
ということである。
そういう意味で、
「結婚したい人がいる」
と言いだしたことで、家族もびっくりだった。
本当は、
「どこかに嫁に行ってくれれば平和にいくんだが」
と思っていただろうが、実際に、娘の方から言いだすというのは、それこそ、
「渡りに船」
ということであろう。
だから、結婚式にしても、
「急いで結婚させる」
ということに対して、相手も何も言わないということで、
「願ったり叶ったり」
ということであろう。
もちろん、桜木の家の方も、
「何かおかしい」
と思わないでもなかったが、
「自分の方にも、隠さなければいけないことがあるのだから、お互い様というものだ」
ということになるのであった。
そういう意味で、さっさと結婚式を済ませ、後は、若い人で、自分たちの家庭を築けばいいということであった。
確かに、
「結婚」
というものは、
「家と家のつながり」
と言われるが、実際には、
「好きになった者同士が、一つの家庭を築く」
ということなのである。
それが、
「恋愛結婚」
というもので。
「恋愛というものが、いかに曖昧なものか?」
ということも、恋愛結婚が当たり前になってくると分かってくることであった。
なんといっても、
「成田離婚」
という言葉があるではないか。
確かに、
「恋愛結婚」
といっても、
「赤の他人が、いわゆる動物でいうところの発情期において、その本能で好きになった相手と家族を作る」
というのが、
「恋愛結婚」
というものだ。
ただ、そもそも、
「血のつながり」
というものが、どういうものなのかということは、特に桜木の方では分かっていると思えることであった。
そもそも、
「母親に連れられて、家を出てから、半強制的に、入信させられた」
ということで、
「幼児の頃から、まわりにいたのは、血のつながりのない家族」
ということだったからだ。
桜木はそういう意味で、
「血のつながり」
というものを信じてはいない。
確かに、宗教団体を抜けてから、家族の下に帰ったのだが、それは、あくまでも、
「路頭に迷う」
ということがないようにしなければいけないということからであった。
「父親の家族がいる」
ということは分かっていた。
作品名:予知夢を見るということ 作家名:森本晃次



