予知夢を見るということ
と言われてきた。
ただ、家族というものがどういうものなのか、正直分からないまま、成長してきた。
教団内部にいれば、母親よりも信頼がおけると思う人も出てくる、教団自体、全員が一つの家族ということであれば、
「母親は、自分だけにかまっているわけにもいかない」
ということで、他の大人がこちらの面倒を見てくれたりした。
教団内部は、比較的自由ということもあり、学校にも通った。
だが、まわりの子供たちを見れば、明らかに考えかたも違えば、家族に対しての考えかたも違う。
学校教育というものが、そもそも根本から教団の考えかたと違っているので、子供の中には、
「教団が間違っている」
と思って、中学生で、いや小学生の時に、教団から抜ける子供もいた。
桜木は、さすがに、中学生までは、
「何かが違っている」
ということを感じながらも、教団内部にいた。
それは、
「自分が、他の子供とは違うところがある」
と感じていたからだ。
それは、
「考えかた」
ということもさることながら、
「他の人にはない力のようなものがある」
と思っていたからである。
それは、
「予知能力がある」
と思っていたからだ。
実際に、小学生の頃、見た夢が正夢になることが多かった。
だから、子供の頃は、
「正夢というのは、誰もが見るものだ」
ということで、
「別に特別な力ということではない」
と思っていた。
しかし、あれは、小学六年生の頃であったか、学校でボヤ騒ぎがあった。
その時、犯人はすぐに捕まったのだが、誰も、そのことを予知できた人はいなくて、
「まんまと犯人の計画通りに、火が出た」
ということであった。
ぼやで済んだのは、あくまでも、偶然人が通りかかったというだけで、それこそ、
「事なきを得た」
といってもいいだろう。
その時、桜木は、
「どうして、誰も進言しなかったんだろう?」
ということを感じた。
桜木が進言しなかったのは、
「どうせ誰も信じてくれない」
ということからではなく、
「他の誰か、大人が進言するだろうから、子供の自分が余計なことをいう必要はない」
と思ったのだ。
だから、つい火事の後、
「皆、遠慮したのかな?」
とつぶやいたのだ。
それを聞いていた先生が、
「遠慮というのは、どういうこと?」
と聞くので、
「僕は、前の日に、学校でボヤがあるというのは、夢で見たんですよ。だから、皆も見ているんだろうと思ったんだけど、子供の僕がでしゃばってはいけないと思って黙っていたんですよ」
というと、先生は、きょとんとして、
「この子は何を言っているんだ?」
という、不可思議な顔になった。
それこそ、
「奇妙なものを見る」
というような、表情である。
そんな顔をされるのは、子供心に心外で、
「余計なことを言わなきゃよかった」
と思った。
しかし、言いだした手前、ひっこめるわけにもいかず、それは、先生の方も同じようで、
「君は、皆が予知能力があるとでも思っているということは、自分では、時々そういう予知ができるということになるのかい?」
というので、
「はい、よく正夢を見るんですよ。特に、何かの事件が起こりそうなときは結構多いので、今回も同じだと思っていたんです」
という。
先生は、彼が新興宗教に入信しているということを知っていたので、
「宗教団体の洗脳のようなものではないか?」
と考え、逆に、真剣に対応すれば、
「こっちまで洗脳されないとも限らない」
ということで、あまり、深くは入り込まなかった。
そのため、自分を、
「俺は関係ない」
という思いから、目はまるで他人事のように見ていたのだろう。
小学生であっても、教団に入っている以上、まわりの目が
「こいつは、新興宗教の人間だ」
ということで、それぞれの立場からいろいろな視線を向けてくることは分かっていた。
この時の先生のように、うさん臭そうに見る人もいれば、
「まるで、汚いものを見る」
という人もいる。
皆、決して、こちらの懐に飛び込もうとする人はいなかったのだ。
それこそ、
「世の中の理不尽さ」
ということで、
「世の中というのは、そんな連中ばかりだ」
と考えると、うさん臭いとはいえ、
「教団の人の方が、まともだ」
と、彼は考えていた、
しかも
「予知夢を見る」
ということは、
「俺がまるで選ばれた人間のようだ」
ということから、
「教団に俺がいるというのは、必然なんだ」
と思っていたからだった。
実際に、教団の中には、予知夢以外の特殊能力を持っているという人がいた。
大人にも子供にもいて、それが親子だったりすると、
「遺伝なのかも知れないな」
と感じたうえで、
「確かに、教団の中にいれば、皆家族ということで、血のつながりはあまり関係ない」
と考えられるが、
「このような特殊能力が遺伝ではないか?」
と考えると、
「やはり、血のつながりは、無視することはできない」
といえるだろう。
そのあたりから、桜木は、
「教団内部のうさん臭さ」
というものを感じるようになった。
ただ、
「学校にいくと、あくまでも、汚いものでも見る」
という目で見られることで、
「今さら、教団を出るというのは、かなりの覚悟がいる」
と考えた。
しかし、
「抜けるなら今しかない」
ということを考えると、
「教団に俺の居場所はない」
と思い、抜けることを考えたのだった。
抜けてから、そもそも勉強していた心理学に興味を持っていたことで、大学受験を目指した。
「子供だけでも帰ってきた」
ということで、父親や、その家族は歓迎してくれた。
「お母さんが帰ってこなかったのは残念だけど、息子だけでも、まともな道に戻ってこれたのは、幸いだった」
ということで、父親の家族からは、自由な行動を許されたのであった。
正直、これが、小学生くらいであれば、徹底的に甘やかされたかも知れない。
しかし、すでに高校生になっているので、甘やかす代わりに、自由にふるまわせるということで、教団を抜けるタイミングとしては、ちょうどよかったのかも知れない。
夫婦で見る予知夢
桜木は、昨年、25歳で結婚した。少し早いかも知れないと思ったが、誰も反対がなかったことで、結婚までは、とんとん拍子だったのだ。
そもそも、
「結婚というと、家族間のことであり、旧家などであれば、相手の素性を調べたりということもある」
というものである。
「さすがに今の時代に、そこまでする人はいないだろう」
と思っていたが、少なくとも、
「高校生の頃まで、いくら母親が無理やりに連れて行ったとはいえ、宗教団体に入信していた」
ということが分かれば、結婚相手も、後ずさりするということになるだろう。
しかし、それ以上に、相手は結婚を急いでいるようだった。
こちらとしても、
「教団にいた」
などということを知られる前に、結婚させてしまおうと考えたようで、
「相手が急いでいる」
作品名:予知夢を見るということ 作家名:森本晃次



